A2:交際3年にもなるのに、親への挨拶を渋ったこと。
そしてあっというまに12月になった。毎年、忘年会などで忙しそうな涼。今年も忙しいのか、スマホのスケジュールを見ながらため息をついている。
「今年も忙しそうだな…せめてクリスマスは11月とかにしてくれたらいいのに」
そんなことを言い出す涼に対し、私はスケジュールを覗き込みながら話しかけてみる。
「今年も、飲みが続くの?遅い?」
「うん、遅くなると思う」
「多少断って、早く帰ってくればいいのに…」
「それができたらいいけどさ…僕が断ることができない性格なのは、奈津美が一番知ってるでしょ?」
「そうだね」
― どうせまた、連日酔っ払って帰ってくるんだろうな。
付き合いが長くなると、そんなことくらい簡単に想像できる。
「奈津美、ごめんね。あんまり構ってあげられなくて」
だから連日帰りが遅い涼に対して、もう何も期待はしていなかったし、遅くなって帰宅しても、何も言わないようにしていた。
そんなことよりも、私の心がエグられたことがある。
それは、年始の過ごし方のことだった。
「それはいいよ。ところで、涼。年始はどうする?」
「あー…どうしようかな」
「私の家で、おせち食べる?」
私の実家は、調布にある。実は母から「さすがに今年は、涼君も連れてきたら?」と言われていた。
36歳になる娘が、交際3年にもなる彼氏を一度も連れてきていないのは、両親も心配になるのは当然のこと。
だから良い機会だと思って、私は涼に「一緒に実家へ帰らない?」と誘っていた。
しかし相変わらず涼は無責任だし、ゴモゴモと何か口籠っている。
「いや、でもやっぱりいいや。迷惑だと思うし」
「迷惑ってことはないと思うけど。私は帰るし、おせちは誰が来ても来なくても作るみたいだし」
「奈津美は行くんでしょ?せっかくだから、実家でゆっくりしてきなよ」
― いや、違うのよ。一緒に帰りたいんだよ。
でも涼は今回も私の家に来るとか、両親に挨拶するといった発想はないらしい。
「涼はどうするの?」
「うーん。一旦、実家に顔出そうかな」
それなら、私が涼のご実家へ行けばいい。そう思った。
しかしこのオファーも、あっさり打ち砕かれてしまった。
「私も一緒に行こうか?ご挨拶もしたいし」
「いや、いいよ。奈津美は自分の実家で楽しんできて」
100歩譲って、私や涼の実家がどこかの離島だったり、片道5時間もかかるような辺鄙な場所…とかならわかる。
しかし私の実家は調布だし、涼にいたっては、ご実家は世田谷区にある。30分程度で行ける近場に住んでいるのに、もちろん私は一度も涼のご両親に紹介もされていないし、紹介される気配もない。
実は毎年、お正月が来るたびに心のどこかで期待していた。
「今年こそ、どちらかの家へご挨拶へ行けるかな」と。
でも涼はその気はゼロだ。
私の家はもちろんのこと、涼のご実家にすら私を連れて行く気はない。
私のことを本当に大切に思ってくれているのなら、結婚を見据えてさすがにそろそろ動き始めているはず。でも何も動かず、実家へ来るのも拒む涼の姿を見て、私は愕然としてしまった。
― これが、きっと涼の答えなんだろうな。そしてこの先、ずっと変わらないんだろうな。
涼の年齢だけが、原因ではない気がしてきた。
涼はまだまだ落ち着く気もないし、私が40歳になっても、同じような小競り合いを続けている気がする。
「決断するなら、早いうちがいい。今じゃないと」
私は自分の未来をちゃんと一緒に考えられるような人を探した方がいい。涼も、出産のリミットがまだまだあって、急かさないような人と付き合った方がいい。
「好きだけど、別れよう」
そう思い、30代前半の約3年という、長くて貴重な時間を費やした恋にピリオドを打つことを決めた。
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2026年の恋愛事情







この記事へのコメント
いやー、そういう問題ではないと思う🤣 親に会わせたとしてもうまくいく保証は無い。 実際結婚が決まった相手(婚約者)でないと家に連れてくるなと言うお宅もあるし。