話題は仕事から趣味の話、そして子どもの頃好きだったものなど、絶え間なく話が弾む。
「遥斗さん、食べ物は何が好きですか?フレンチとか?」
「フランス料理とか懐石料理も好きだけど、結局カレーとかハンバーグが落ち着くというか、上位から退かないんだよね」
「そういえば、食事と異性の趣味って似ているって聞いたことがあるんですけど、遥斗さんもそう?私はどっちの部類に入るのかしら?フランス料理?カレー?」
「え?」と返答に戸惑っていると、香澄は「ふふ、冗談ですよ。意外と真面目ですよね」と意地悪に笑う。
無邪気に冗談を言い合えることが心地よく、遥斗は香澄との時間が何よりも楽しいと感じる。
最近は尽くす恋が多かったが、やっと本来の遥斗らしい恋愛ができている気がした。
「ご馳走さま。すごく楽しかったです」
「また会えるかな?」
「もちろん。次は遥斗さんのお部屋が見てみたいな」
香澄の方から言われ、内心「やった」と思う。
二人はキスを交わし、見つめ合う。香澄の瞳の中にも熱を感じた。
◆
次の日。取引先とミーティングの後、二宮に誘われ会社近くのカフェでコーヒーを飲むことにした。
仕事の話の後、いつものように二宮が切り込む。
「で、最近はどうなの?なんか遥斗、楽しそうだけど」
「そうですか?この間、二宮さんに呼ばれた日本人の集まりで出会った人と、いい感じなんです」
「え、もしかして…香澄ちゃん?」
遥斗が「はい」と答えると、二宮の顔が一瞬曇った。
「あー、そっか。香澄ちゃんか…」
「え、なんですか?知り合いですか?」
「いや。うん、まあ、楽しんで」
二宮の言い方が気になったが、ちょうど香澄から連絡が来て、遥斗はすぐに忘れてしまった。
◆
12月半ばの土曜日。
昨日ニューヨークに到着した香澄と、昼からデートをした。
『ABC Kitchen』でランチを楽しんだ後、ユニオンスクエアのホリデーマーケットへ。手作りのキャンドルやマグカップを眺めながら、クリスマスの思い出を話す。
夕方には「クリスマス・スペクタキュラー」のショーを観て、ロックフェラーセンターの巨大ツリーを見にいくことに。
人混みの中離れそうになった時、二人は自然と手を繋いだ。
その時、スケートリンクを見つけた香澄が、嬉しそうに遥斗の顔を見て言う。
「ねえ、滑ってみよ?」
無邪気に遥斗のコートの裾をつまむと、チケット売り場に並びに行く。行列ができていたが、二人で並んでいれば時間などすぐに過ぎた。
「俺、スケートなんて何年ぶりだろう…」
「じゃあ競争しよう。私が勝ったら、そうだな…遥斗さんの一番恥ずかしかった黒歴史を、一つ教えてくださいね」
そう言い残すと、香澄は華麗な滑りで反対側まで滑っていく。
思わず笑みが溢れる。いつもの上品な彼女とは違い、少女のような笑顔がとても可愛く見えた。
― 可愛い子とニューヨークでクリスマスデートなんて、完璧だな。
そして夜、夕飯を済ませた後、二人は遥斗のアパートメントで過ごすことにした。
マーケットで買ったキャンドルに火を灯し『Amarone』のワインで乾杯する。
美しい夜景をバックに、お互いの気持ちを表すような深い紅色がグラスを染める。
その日、遥斗はこの上ないほど最高の夜を過ごした。








この記事へのコメント
今までの出会いは、毎回ミシュランのカトリックやらプレゼントくれくれ中国インフルエンサーやらいかにもな感じで身体の関係には進んでなかったから、一歩前進? 笑
香澄はリッチな元カレと復縁でもしたんじゃないのかな。国際遠距離はCAでもなかなか難しい。