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ニューヨーク恋愛物語~商社マン遥斗の場合~ Vol.6

「何度デートを重ねても、恋人じゃない」海外の曖昧な関係に翻弄されるのは、女性だけじゃなかった



土曜日の14時。

莉乃はスリットの入った膝下のワンピースにジャケット姿で現れた。

スタイルのいい彼女にとてもよく似合っていて、遥斗はテンションが上がる。

事前に買っておいたチケットを渡すと、一瞬間を置いてから「Thanks」と莉乃はチケットを受け取った。


二人でゆっくりと絵を眺める。遥斗は時々、莉乃に知識を披露した。

「この人の絵はさ、笑顔が多いよね。これはフランス・ハルスの筆が早かったから描けたって言われてるんだ」

「なぜ?」

「笑顔はずっと保つのは難しいから。元々、笑顔は御法度とされていたけど、この時代は平和で豊かになったから受け入れられたんだよ」


そう語る遥斗に、莉乃は疑いの眼を向ける。

「もしかして、AIで調べた?」

「え、バレた?…実は、来る前にいくつかの作品は調べてきた。うわ、はずいな」

遥斗が本気で恥ずかしがっていると、莉乃が微笑む。

「カッコつけた遥斗くんより、素のままの方が私は好きだな」

好き、という言葉に、無意識に反応してしまう。

きっと深い意味はない、そう思いながらも、遥斗の気分が上がった。

けれど美術館を見終わり、ディナーでもと誘うと「今日はこの後予定があるの」とさっさと帰ってしまった。

― 俺、またなんかやらかした?それともやっぱり、絵を見ることだけが目的だった?

遥斗は悶々として帰宅すると、ソファに突っ伏して「あー」と叫んだ。


デートがうまくいかなかったと落ち込んでいた数日後。莉乃からメッセージが届いた。

「金曜日、ディナーに行かない?」

え、うそ、と会社で思わず声が漏れる。

― 嫌われたワケじゃなかったんだ…。

これまで、モテると思っていたのに振られ、うまくいったと思ったデートの後には音信普通。

遥斗は女性の心がわからず、混乱する。

でも、莉乃といるのはやはり楽しい。

彼女は日本のこともアメリカのこともわかるし、はっきりとしていて裏表がない。

異国の地で自立し、自信のある姿は、とてもカッコよく見える。

「了解、どこがいい?予約しておくね」

遥斗は数秒考えると、すぐに返信した。



そして迎えた三回目のデート。洒落たビストロを予約し、花を渡して椅子を引いた。


コチラに来て学んだ、完璧な紳士としての振る舞い、だが。

「ありがとう。でもこういうの、あまり好きじゃないの」

「え?」

「私、女だからしてもらって当たり前、っていうのが苦手なの」

彼女は綺麗な所作で、ナプキンを膝に置いて言った。

「あなたが私のためを思ってくれた気持ちは嬉しい。でも、対等がいいの」

遥斗は、また間違えたか、と焦る。

「そっか、わかった。次からは気をつけるよ」

「わかってくれて、ありがとう」

微笑む莉乃を見て、媚びない彼女が魅力的に映る。

嫌なことは嫌だとはっきり言うが、真正面から向き合ってくる。

面倒くさいはずなのに、不思議と惹かれた。

ディナーの帰り、夜風の冷たさを理由に彼女の肩を抱くが拒まれない。

すると、彼女の方から尋ねた。

「今夜、泊まってもいい?」

遥斗の警戒心はすっかりと解け、二人はそのまま体を重ね合わせた。


翌朝、二人で朝食を取りながらたわいもない話をする。

― これはもう、付き合っているってこと…?

その時突然、莉乃が言った。

「遥斗は他に何人の子とデートしているの?」

「え、どういうこと?」

「だって、今ってまだデーティング期間でしょ?お互い楽しまないと」

デーティング期間とは、付き合う前に色々な人とデートをすること。こちらでは体の関係を持つことも普通にある。

ただ、遥斗の辞書にはなかった。

彼女が純粋に言っているのか、牽制しているのか、それすらもわからない。

遥斗はどう答えていいのかわからず、ただ微笑んだ。


▶前回:上品なCAに翻弄された28歳商社マン。実は彼女が「お金目当て」だったと気付いた理由

▶1話目はこちら:「あなたとは結婚できない」将来有望な28歳商社マンのプロポーズを、バッサリと断った彼女の本音とは?

▶︎NEXT:12月17日 水曜更新予定
莉乃に言われ、新しい女性を探すことに。そんな時、ある人から連絡が来て…。

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この記事へのコメント

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No Name
今回は上手くいかなくて良かったよ。莉乃すごい変人じゃない?駐在員を見下してる感が....
花束もらって椅子引いてもらったなら素直に“ありがとう” でいいのに。 中途半端にデーティング文化取り入れてたり、日本人なのに超面倒臭い😂
2025/12/10 05:2314
No Name
そのギャル婆さんがいる日本人コミュニティーとは無関係の女性を探した方が.. 全て筒抜けで嫌じゃん。莉乃もすごいクセ強すぎてアメリカ人男性には嫌われてそうだわ。
2025/12/10 06:1512
No Name
初対面で「なんだコイツ」と思ったなら、連絡先教えなくていいのに。 まぁ遥斗も詳しくもないのにAIで調べた知識を披露するのはイタいけど作り話だから面白い。
2025/12/10 06:309
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ニューヨーク恋愛物語~商社マン遥斗の場合~

ニューヨーク。
眠らない街で、スマホを片手に恋を探す男がいた。

日本でも海外でも主流となったマッチングアプリはもちろん、最近流行っている「リアル」な出会いイベントにも顔を出す。

成瀬遥斗、28歳。総合商社勤務6年目。ニューヨーク駐在中。

その肩書もあって、マッチングアプリを開けば、メッセージは山のように届く。
しかし、出会いは星の数ほどあるが、本当に心を許せる“誰か”には、なかなか出会えない。

成功や出会いが次々と生まれるニューヨークで、遥斗の恋人探しの旅が始まる。

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