港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。
女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。
タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。
▶前回:「好きだから別れる…」そう決断した女。しかし10年後男に再会したときに…
「…起きなきゃダメ?」
気だるげな声と共に、大輝に後ろから、また抱きすくめられた。起き上がろうとするたびに、あと少しだけ、と首筋に落ちてくるキスの誘惑に、ともみは1時間ほど前から何度かベッドに引き戻されている。
ベッドサイドテーブルに置かれた時計を見ると朝10時半。15時にTOUGH COOKIESに出勤する予定のともみは時間に余裕があるものの、確か大輝は12時から恵比寿でランチミーティングだと言っていた。中目黒のともみの家からは、タクシーを使えば10分程で着くとはいっても、そろそろタイムリミットだろう。
「もう起きた方がいいよ。先生を待たせられないでしょ?」
朝に弱い大輝の腕の中から、何度かの身じろぎの末に抜け出すことに成功したともみはカーテンを開けた。その快晴の光に、大輝が駄々をこねる子供のように背を向ける。
ランチミーティングの相手はキョウコで、共同執筆するドラマの打ち合わせらしいのだが、詳しい情報をともみはあえて聞かなかった。何度か揺り起こすうちに、なんとか大輝が起き上がり、ともみはお湯を沸かすためにキッチンへ向かった。
再来週の引っ越しのために荷物をまとめ始めたリビングには数個のダンボールが広げられている。朝の苦手な愛しい男を起こすことから1日が始まる。それが日課になることを想像すると、むず痒く幸せな気持ちになった。
「一緒に暮らしたい。ダメかな?」
ともみの部屋の更新が迫っていることを知った大輝にそう提案され、同棲することを決めた。新しい住まいは、2人が恋人になった頃にリノベーションが終わった、大輝が買った中古マンションになる。





この記事へのコメント
でも、大輝の吹っ切れた感じから焼けぼっくりに・・・はあり得ないと言うかこの二人が離婚を止めるケースも考えられるか?ルビーやメグの件含めて続きを早く読みたい。
いずれ産休育休を取るともみに代わってルビーがお店を任されるバージョンも読んでみたいです。