Q1:女がすぐに交際をOKした理由は?
怜と知り合ったのは、結婚相談所だった。
今年で40歳になる僕は、結婚を焦っていた。周囲のほとんどが結婚をしており、出会いもない。マッチングアプリもやってみたものの、なかなかいい出会いに巡り会えなかった。
そんな中、友人から“最後の砦”として、結婚相談所を勧められた。
実際に相談所に入会すると、想像以上にお見合いの件数が多くて驚いた。
しかし5人ほどに会ったものの、ピンと来る人には会えなかった。
「どうしようかな」と思っていたタイミングでお見合いしたのが怜だった。
今年で31歳になる怜は、一橋大学卒業で大手メーカー勤務。実家は長野県で、長女。プロフィールは完璧だった。
「ぜひ、お会いしたいです」
僕の方から申し込みをし、会うことになった。場所は六本木にある外資系ホテルのカフェにしたのだが、10分前には到着した。
すると、まだ約束の5分前なのにやってきた怜。時間に誠実な感じや、僕の方へ向かってくる彼女の姿を見て、何かが始まる予感がした。
「初めまして、怜です」
「初めまして、哲也です」
怜が来たので、立ってお辞儀をする。すると、怜は少し見上げながら、僕に向かって微笑んだ。
「身長、お高いんですね」
「そうなんですよ。無駄に185cmもありまして」
「羨ましいです」
とはいえ、怜も160cmくらいはあるだろう。
「とりあえず、座りますか。何を飲まれますか?」
「じゃあ…カフェラテをいただきます」
二人の間に、静かにカフェラテの湯気が立つ。
何度経験しても、この初お見合いの瞬間は気まずい。
すると怜も同じことを思っていたのか、僕の気持ちを代弁してくれたかのように微笑んだ。
「何を話せば良いか、迷っちゃいますよね。気軽にお願いします」
怜は清楚な雰囲気が魅力的で、笑った時にエクボができるのが印象的な、綺麗な人だった。
「怜さんのお勤め先は、どの辺りですか?」
「私は日本橋です。哲也さんは?」
「日本橋、いい所ですよね。僕は大手町です」
「そうなんですね。近からず遠からず…という感じですね」
最初、おとなしい感じの女性かと思ったけれど、笑顔でたくさん話してくれる。おかげで、初対面なのにとても会話がスムーズにいく。
「じゃあ哲也さんは、大学は京都だったんですね」
「そうなんです。京都は、行かれたことありますか?」
「実は20代の頃、転勤で2年間大阪に住んでいたことがあって、その時によく京都へ行っていたんです」
「え!じゃあ関西、お詳しいんですね」
話していると、共通点が多いことがわかった。
あっという間に時間が過ぎてしまい、1時間のお茶タイムが終わりに近づいてきた。
「怜さん、他も何人か進められていますか?」
結婚相談所は、「仮交際」といって何人か並行してお見合い…つまり、デートができる。しかし「本交際」へ進むと、相手は一人に絞らなければならない。
今日が初対面だけれど、「怜が他の人とデートをするのは嫌だな」と純粋に思った。
「実は…はい…」
「ですよね、怜さんモテそうですし。ただ、僕は本交際へ進められたら嬉しいなと思っています」
「え?仮交際もせずにですか?」
2、3回会って、仮交際を経てから、本交際へと進めるのが通常のパターンだ。でも僕の中では怜と交際に進みたい気持ちは決まっていた。
「ただもちろん、焦らずにゆっくり考えてください。怜さんのお気持ちが優先なので」
「わかりました…。哲也さん、ありがとうございます!」
そしてこの解散後、結婚相談所を介して正式に“本交際へ進む”との連絡が来た。







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