「みんなで闘うって…ルビー、どこまでミチさんに話す気…?」
確かに光江はミチに話すなとは言わなかったが、今、全てを伝えてしまうことが得策なのかという迷いで、ともみは聞いた。
「でもともみさん、なんでわざわざ光江さんがうちらの前でメグさんを攻撃したのかってところにポイントがある気がしない?」
「…ちょっと待て、ボスがTOUGH COOKIESに?メグも一緒に?」
ルビーは、ミチに頷いてから続けた。
「ともみさんもアタシも、なんかモヤモヤはしたわけじゃん?今日の光江さんって、光江さんらしくないなぁって」
「まあ…それはそうだけど」
「西麻布の女帝っていっても、一応は人間なんだし、光江さんにとってミチ兄は特別なオンリーワンだもん。だからミチ兄のことだけは、つい感情的になるとか、甘えてばっかりいるんじゃねぇよ、ってメグさんに言いたくなるのも、わからなくないよ。でもさ」
どういうことだと、眉をひそめたミチに、なぜかともみが謝りたい気分になった。
「メグさんが今何より欲しいものをちらつかせてさ。その情報が欲しいならミチを手放せ、もう2度と会うなとか。しかもミチさんのいないところで言うなんて、韓国のドラマに出てくる金持ちのイヤミなマダムって感じじゃん。
よくあるでしょ、息子の恋人が気に入らなくて、金はいくらでも渡すからウチの子と手を切りなさい!ってヤツ。そんな小物っぽいこと、光江さんがするかなぁ」
そのルビーの言葉に、記憶ボタンのスイッチを押されたかのように、ともみは突然思い出した。メグのTOUGH COOKIESへの来店予約をしたのは光江だ。そして確かその時。
「メグの本心を聞いてやってくれないか」
と言っていたのではなかったか。蘇った記憶にルビーの言葉が重なっていく。
「ともみさんとアタシが感じてた今日の光江さんが光江さんらしくなかった気持ち悪さを、光江さんの話の内容じゃなくて――なんで、その話をうちらの前でする必要があったのかってことの方を中心に考えてみたら、なんかしっくりくるんだよね。
光江さんは、ともみさんとアタシ…っていうかTOUGH COOKIESをテストしてたんじゃないかなって」
「うちの店を…テスト?」
「うん。うちの店のコンセプト的なこと?ともみさんとアタシが、それをどこまでできるようになってるのかってことを今日、確認しにきた、的な?」
そう言われて、ともみは店のHPに書かれている言葉を、久しぶりに思い出した。
踏み出す勇気。そして決断。それらを促すために作られたのが、BAR・TOUGH COOKIESだということ。







この記事へのコメント
そしてこれを考えた作家さんも素晴らしい!
でも、そうだよね光江さんだってあんな風に別れさせるような事しない🥺 ともみとルビーを試すのも含めてメグミチに対する親心や優しさからなんだろうね。