メグは目を伏せ、情けなさそうに笑った。
「もらってばかりのテイカー(Taker)だって言われたのも、確かにその通りだもん。ミチには許してもらってばかりだったなって。別れも一方的だったのに突然戻ってきた今も、甘えてばかりの女なんて、そりゃ光江さんも許せないに決まってるよね。誰より特別なミチのことなんだもん」
光江は実の母ではないとミチから聞いたことがあるけれど、近しい親族だったりするのだろうか。メグなら知っているかもしれないと思ったが、聞いても困らせるだけだろうと、ともみは別の質問をする。
「あの書類が無ければ、リリアという女の子を助けることはできないんですか?メグさんは世界的に有名なジャーナリストだと聞きました。光江さんを頼らなくても…その伝手で探せないものなんでしょうか」
「これまで…違法なルートも含めてあらゆる伝手を使って探してきたけど、今はまだ命がありそうだっていう噂レベルの情報にしかたどり着いていなくて。正直もうお手上げに近いの。でも光江さんに頼れば、居場所の特定だけじゃなくて、助け出すルートだって確保されてるわけだから」
「メグさんは…光江さんの提案を受けるつもりですか?」
「リリアを助けられるなら何だってする。助けられなければ後悔どころじゃすまないから」
「ミチさんに会えなくなっても、後悔はしますよね?」
「後悔もなにも、元々、私がミチを手放したんだし。だから正しい形に戻るだけなんだよ。とにかく…リリアの命よりも大切なものなんて、今はないんだから」
― 正しい形に戻る…。
メグとミチの正しい形とは、一体どんな形をしているのだろうかと思いながら、ともみが白ワインのグラスを手に取った時、「う~ん」とルビーが唸った。
「メグさんの、その答えじゃたぶん違うっていうか…な~んか、試されてる気がするんだよね」
「試されてるって…光江さんに?」
メグの疑問に、ルビーが大きく2回頷いてから続けた。
「だから今から――ミチさんを呼び出して、4人で飲みません?」
「え…?」
呆気にとられたメグに、ルビーはニコニコと言葉を重ねる。
「光江さんが狙ってたのは、それなんじゃないかなぁって。今日は月曜日でSneetは休みだし、たぶんミチさんはヒマしてますよ。だからみんなで飲みに行っちゃいましょ♡」
困惑したメグに、助けを求めるような視線を送られたともみも、ルビーの提案の意図を理解しきれてはいなかった。けれどルビーを信じて“店長”の仕事をすることにした。
「ご来店された時は、秘密保持契約のご希望はございませんでしたが、改めてお伺いします。ご来店されてから今までの話を、ミチさんを含む誰にも口外しないという契約を結ぶことができますが、いかがなさいますか?」
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