A1:最初からグイグイ来るなと思っていた。
美里と出会ったのは、食事会の席だった。男女2対2だったけれど、美里は最初から、すごく僕の方へ矢印が向いていたと思う。
― この子、俺のことすごい見てくるな。
自分でも、そう感じるほどだったから。
ただ話していると、お互い共通点が多く、会話は盛り上がった。でも僕からすると、「明るくていい子だな」くらいで終わっていた。
食事会の翌日、美里からお誘いLINEが届く。
― Misato:雄大くん、昨日はありがとう!昨日話していた餃子のお店、六本木にあるんだけど。今度一緒にどうかな?
そういえば、昨日そんな話をしていた気がする。特に断る理由もないので、僕は一旦二人で、美里が話していた『スチーム Dim sum & Wine』へ行くことにした。
ワインと迷ったけれど、まずは二人でビールで乾杯をする。
「では、乾杯!」
乾杯しながら、美味しそうにビールを飲む美里を見て、僕は少し驚いた。
「美里ちゃん、餃子が好きなんだ。意外だね」
どこかホワホワとしている美里。そのイメージと、今目の前でビールを飲み干す美里の間に、少しギャップがあったからだ。
「そう?餃子とビールって、最高の組み合わせじゃない?」
「わ〜。そういうの、わかってくれる系だ。嬉しい!」
ビールと餃子のコンビネーションの美味しさをわかってくれるなんて、きっといい子に違いない。独断と偏見で、そう思った。
そして流れ的に、好きな食べ物の話などになった。
「雄大くんは、何が好きなの?」
「食べ物だと、餃子大好き。あとはカレーとか、唐揚げとか…」
「何それ。子どもみたい」
「それ、よく言われる。たぶん俺、舌が子どもなんだと思う」
「でもいいね。ご飯とか作っても、何でも喜んでくれそう」
「それはもちろん!むしろ、ご飯なんて作ってもらえたら感動して泣いちゃう」
すると、美里は急に恋愛玉をぶっ込んできた。
「本当に?いつでも作るよ」
これは、どういう意味なのだろうか。
ご飯を作る、ということはどちらかの家でしか成り立たない。キッチン付きの宿へ泊まりで旅行する、キャンプへ行くなどの可能性もあるけれど、それはさらにハードルが上がる。
「マジで!?美里ちゃん、ご飯作れる人?」
「うん。普通の家庭的な料理しかできないけど…」
「それがいいんだよ」
「いつでも作るから、言ってね」
― そんな簡単に、許しちゃう感じ?
男女どちらかの家へ上がることに対して、特に抵抗はないのだろうか。いや、むしろ向こうからノリノリで親密度を上げようとしてきており、美里のこの発言に、僕は少し引いてしまった。
さらに、この食事が終わった後のことだった。
「あ〜お腹いっぱい。この後どうする?」
そう尋ねると、食い気味に2軒目を提案してきた美里。
「せっかくだし、もう1軒行かない?」
「美里ちゃんが、大丈夫なら」
「もちろん。今夜は何時まででも」
― そんなに気合入ってる感じ?
今日は、一応初デートだ。
それなのに最初から2軒目へ行く気満々で、家へ上がるのも厭わないような勢いの美里に、僕は完全に押されていた。
「さすが。じゃあもう1軒行こう!」
結局、この日はかなり遅くまで飲んだ僕たち。ただ永遠に帰らなさそうな美里に対し、僕はある気持ちを抱き始めていた。







この記事へのコメント
そんな簡単に許しちゃう感じ?
そんなに気合い入ってる感じ?
口調が鼻につく。