A1:TPOがなっていなくてびっくりした。
芽衣とは、先輩がセッティングしてくれた食事会の席で出会った。「可愛い子が来るよ」と聞いてはいたものの、実際に芽衣が来た時は、その通りで思わず二度見をしてしまったほどだ。
「初めまして、芽衣です」
そう挨拶をした芽衣を、僕は恥ずかしながらチラチラと見てしまう。
― この子、本当に可愛いな。
話しているときも自分の食事なんてそっちのけで、表情をクルクルと変えながら、しっかりと僕たちの話を聞いてくれる。
男性ウケしそうな要素抜群で、僕は思わず感心してこんな声が漏れていた。
「芽衣さんって、絶対にモテますよね?」
すると、やんわりと笑顔で否定してきた芽衣。
「そんなことないですよ〜」
でもその否定の仕方もどこか定型文っぽく、「あぁ、この人慣れているんだな」と思った。
「普段は、どういうスケジュールなんですか?」
「基本的に、月金はオフィスにいますよ。週末は友達と出かけたり…陽平さんは?」
「僕も大体同じです。ただ最近、出張が増えてきて週末都内にいないことも多いですが」
「そうなんですね…お忙しいんですね」
「でも時間はいつでも作れますので!」
この日は食事会だったこともあり、表面的な会話をして終わった。だから翌日、グループLINEから僕は抜け出し、芽衣を個別でデートに誘ってみた。
するとすぐにOKの返事が来たので、僕はかなり気合を入れて、虎ノ門にある予約困難な高級フレンチレストランへ芽衣を連れて行くことにした。
しかしこのデートで、僕は彼女を連れて行ったことを後悔することになる…。
◆
デート当日は、入り口が分かりづらいので、分かりやすい場所で待ち合わせをした僕たち。
少し早めに着いて待っていると、向こうから芽衣が可愛らしく駆け寄ってきた。
「陽平さん!お待たせしました」
その態度は可愛かったが、僕は芽衣の服装を見てギョッとしてしまう。
高級なフレンチレストランだと、店の情報も伝えていたはずなのに、芽衣は肩がパックリと開いた、かなり露出高めの服装でやってきたからだ。
オフショルダー程度ならまだ良いけれど、前屈みになると胸がチラチラと見えそうなくらい開いている。
― おいおいおい…。
この服装を見て、「セクシーだな」とはならない。むしろどこか安っぽく見える。でも今さら着替えることもできないだろうから、とりあえず店へと向かうことにした。
「全然ですよ。入り口が分かりづらいかなと思ったので…。じゃあ、行きますか」
そして店へ入ると、大袈裟なくらい喜んでくれた芽衣。
「素敵…私、ここのお店一度来てみたかったんです」
「芽衣さん、初めてですか?」
「はい、初めてです♡」
こんなに喜んでくれるのは、嬉しい。でもそれ以上に、芽衣の言動は幻滅することばかりだったのだ…。
この記事へのコメント
はなまるうどんでつゆを飲み干すようにスープ飲んだんだ。さすが小動物! 芽衣、高級店が大好きとか言ってたが今までどれだけ恥を晒してきたんだか...