「ねぇ、次は一緒に撮ろうよ」
「おっ?やっと、僕がカメラマンじゃないことに気づいてくれました?」
颯斗は笑いながら私に肩を寄せた。
今日が、私の誕生日の前日だということを、颯斗は知っているはず。
誘ったのは私だけど、颯斗はパークのチケットを取ってくれたし、ここに来るまでのタクシー代も払ってくれた。
もしかしたら、ディナーのあたりに“何か”があるかもしれない。そう期待に胸を弾ませながら、デートを楽しんだ。
◆
14時すぎ。
ランチを済ませ、アトラクションにひとつ乗ったあたりで、私はInstagramのストーリーをチェックした。
何個もアップした“自分なりに映えている画像”は、ちゃんとカワイイし男性と来ているのでは?という絶妙な匂わせも完璧だ。
順調に既読もついて、スタンプの反応やコメントもある。
― ん?
その中に、最近アカウントを教えあったばかりのアイコンに目がいく。
『私も来てるよ〜!いい天気でよかったよね♡』
「え、うそ」
コメントをくれたのは愛梨で、彼女も近くにいることが判明した。愛梨のInstagramも更新されていたが、“親しい友達限定”で投稿されていたのは、彼女の息子の姿だけ。
「あれ……愛梨は?」
そう思った後で、気づいてしまった。
子どもがいる女友達たちは、家族といる時に自分ひとりの画像をアップしないという事実に。
子どもがはしゃいでいる様子、美味しそうに何かを食べている動画、可愛く撮れた瞬間。稀に子どもとのツーショット。それも、彼女たちは自らの写りよりも子どもの写りを気にしている。
いつだって、彼女たちの主人公は子どもなのだ。
私は37歳…明日には38歳になる。もう、ひとりで浮かれて撮影してもらう年齢でもないのかもしれない。そう思うと、楽しかった気持ちが急にしぼんでいった。
「ねぇ、次どこ行く?アイスとか、甘いもの食べたくない?」
颯斗の声に顔を上げ、「うん、チュロスは?この近くにシナモン味のお店があったはず」と答えたけれど、胸の奥にはすでに、小さなつっかえができていた。
この記事へのコメント
男性と来ているのでは?という絶妙な匂わせも完璧だ。
ゴメン、イタいおばさんに思えてしまう。たまに、50過ぎてもミッキーカチューシャ付けてはしゃいだ写真(勿論過度な美白加工)連投するような人いるけどさぁ。
まりかは、よくもまぁセフレ(?)とディズニー行ったなと...。でもこんな惨めな気持ちになる相手と一緒にいても自分の価値が下がるだけだから一刻も早く縁切った方がいい!