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TOUGH COOKIES Vol.26

「まだ好き…」自分を振った彼と2ヶ月ぶりに再会したら、意外な展開に…

SUMI

大輝との出会いは、まさに一目惚れで。ともみは圧倒的に『美しい』外見をどうしても手に入れたくなった。けれど、会話を重ね、体を委ねていくうちに、大輝の内にはまず純粋さがあり、さらにその奥に進むと、何かを諦めて生きているかのような、薄暗さがあることも知った。

― で、気づいたときには、沼落ち。で、玉砕。

ともみは、一度も失恋をしたことがなかった。それなのにあっさりとフラれた。しかも、人生で初めて本気で欲しいと願った男に。みじめで情けなくて、それでも…どうしても諦めきれず、友達でいたいとすがりつき、ようやく今夜誘うことができたのに。


― 何から話せばいいのか…。

まともな会話を交わせないまま、桜並木の終わりが見えてきた。そもそも異性の友達などいない(同性もほぼ皆無の)ともみだ。こうなることは目に見えていたから、会話に困ったらミチを頼るつもりで、Sneetを待ち合わせに選んだのに。

― 何が、2人で桜を見てこい、よ。ミチさんには、今度絶対埋め合わせしてもらう…!

ミチはミチで…元恋人との遭遇によるパニックが現在進行形だということなど、すっかり忘れたともみが八つ当たりのような感情を抱き始めた時、再び大輝が立ち止まった。そして。

「ここまでに、する?」

歩行者への信号はなく、陸橋を上がらなければどちら方向にも進めない、渋谷橋の交差点に到着してしまった。中目黒に自宅があるともみなら、「ここからタクシーに乗って、駒沢通りから帰るのが早いよね」という大輝の気遣いだった。

「そう、だね」

― 大輝さんも、気まずいんだろうな。

気を遣わせているのだと申し訳なくも気恥ずかしくもなったけれど、このまま別れてしまえば、また振りだしに——2ヶ月もの間LINEすら送れず、悶々としていた状態に戻ってしまう。

そう思うと立ち去ることができず、「ミチさんがあんなに慌てるなんて」とか「元カノさんパワフルだったよね」「あの2人よりを戻すのかな」とか、ミチの話題でなんとか場をつなごうと早口になってしまったともみを、ふっ、と大輝が笑った。

「…なに?」
「いや、ともみちゃんもまだ帰りたくないって思ってくれてるんだなってうれしくて」
「……ともみちゃん“も”っていうのは…?」

大輝の言葉に期待してはダメだと自分にアラームを出しても、手のひらはかあっと熱くなっていく。じんじんと広がるその熱が手から腕、そして心臓へと流れ込んだかのように、ともみは息苦しくなり、ぎゅっと指先を握り込んだ。

「オレもまだ帰りたくない、よ。でもオレから言い出すのはダメだろうなと思ってたから。歩きながらずっと、どうしよう、どうしようって、ドキドキというか…緊張してたし」

この記事へのコメント

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「たぶん、そう、です」
えーーーーーーー♡ 嬉しい!嬉し過ぎるね。早くその先を読みたい。
2025/08/19 05:3144Comment Icon1
No Name
大輝は確かに宝の事を特別視していたけれど、すごく心を奪われたとかいわゆるLOVEまでは行ってなかった記憶が.....。 あくまでLIKEの域だったように思うので。そして人妻への気持ちに区切りがついたという事よね!もう…ともみちゃん、やったね。読者としても本当に嬉しい。
2025/08/19 05:4132
No Name
ともみが2か月全く連絡出来なかった事で、大輝がともみの大切さを改めて感じたんだね。連絡出来なかった事が無意識の駆け引きになって功を奏した! 深夜桜並木の下で告白最高♡ もうどうやったらこんなに読み手をときめかせるストーリーを考えられるのか....ライターさんブラボー!
チラッと出て来た美景は代表を辞任する前提だと世間は逃げ出すように感じるかも....インスタライブで報告もどうなんだ? エンリケの不
祥事が浮かんでしまった。 あと、メグミチだよね。どんな展開になるんだろう....
2025/08/19 05:5330Comment Icon4
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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