大輝との出会いは、まさに一目惚れで。ともみは圧倒的に『美しい』外見をどうしても手に入れたくなった。けれど、会話を重ね、体を委ねていくうちに、大輝の内にはまず純粋さがあり、さらにその奥に進むと、何かを諦めて生きているかのような、薄暗さがあることも知った。
― で、気づいたときには、沼落ち。で、玉砕。
ともみは、一度も失恋をしたことがなかった。それなのにあっさりとフラれた。しかも、人生で初めて本気で欲しいと願った男に。みじめで情けなくて、それでも…どうしても諦めきれず、友達でいたいとすがりつき、ようやく今夜誘うことができたのに。
― 何から話せばいいのか…。
まともな会話を交わせないまま、桜並木の終わりが見えてきた。そもそも異性の友達などいない(同性もほぼ皆無の)ともみだ。こうなることは目に見えていたから、会話に困ったらミチを頼るつもりで、Sneetを待ち合わせに選んだのに。
― 何が、2人で桜を見てこい、よ。ミチさんには、今度絶対埋め合わせしてもらう…!
ミチはミチで…元恋人との遭遇によるパニックが現在進行形だということなど、すっかり忘れたともみが八つ当たりのような感情を抱き始めた時、再び大輝が立ち止まった。そして。
「ここまでに、する?」
歩行者への信号はなく、陸橋を上がらなければどちら方向にも進めない、渋谷橋の交差点に到着してしまった。中目黒に自宅があるともみなら、「ここからタクシーに乗って、駒沢通りから帰るのが早いよね」という大輝の気遣いだった。
「そう、だね」
― 大輝さんも、気まずいんだろうな。
気を遣わせているのだと申し訳なくも気恥ずかしくもなったけれど、このまま別れてしまえば、また振りだしに——2ヶ月もの間LINEすら送れず、悶々としていた状態に戻ってしまう。
そう思うと立ち去ることができず、「ミチさんがあんなに慌てるなんて」とか「元カノさんパワフルだったよね」「あの2人よりを戻すのかな」とか、ミチの話題でなんとか場をつなごうと早口になってしまったともみを、ふっ、と大輝が笑った。
「…なに?」
「いや、ともみちゃんもまだ帰りたくないって思ってくれてるんだなってうれしくて」
「……ともみちゃん“も”っていうのは…?」
大輝の言葉に期待してはダメだと自分にアラームを出しても、手のひらはかあっと熱くなっていく。じんじんと広がるその熱が手から腕、そして心臓へと流れ込んだかのように、ともみは息苦しくなり、ぎゅっと指先を握り込んだ。
「オレもまだ帰りたくない、よ。でもオレから言い出すのはダメだろうなと思ってたから。歩きながらずっと、どうしよう、どうしようって、ドキドキというか…緊張してたし」
この記事へのコメント
えーーーーーーー♡ 嬉しい!嬉し過ぎるね。早くその先を読みたい。
チラッと出て来た美景は代表を辞任する前提だと世間は逃げ出すように感じるかも....インスタライブで報告もどうなんだ? エンリケの不...続きを見る祥事が浮かんでしまった。 あと、メグミチだよね。どんな展開になるんだろう....