A1:ずっと笑顔でいてくれて、空気が明るかった。
日奈子と出会ったのは、マッチングアプリだった。前述の通り食事会がもはや生活のルーティンなのではないかと思うほど、何度もこなしてきた。紹介もあったし、もちろん以前に付き合っていた彼女も何人かいる。
しかし30歳になるタイミングで、同期がどんどん結婚し始め、多少焦り始めた。
― あれ?俺には“特別な一人”、いなくないか?
そして出会いをこなしていくうちに、誰が良いのかわからなくなってきたというのもある。そこでちゃんと「どんな人が好きで、どういう人と結婚したいのか」を真剣に考え、自分の中で頭を整理しながら、一度アプリを使うことにした。
そしてスクロールしていると、ふと手が止まった。それが、28歳の日奈子だった。
モテそうな、可愛い顔写真とは対照的に、プロフィールには“丸の内勤務です。アプリ始めたばかりなので宜しくお願いします”とだいぶ謙虚な内容が書いてある。
「可愛いし、性格良さそう」
最初は、それくらいの感覚だった。
― K:こんにちは、恭平といいます。僕も丸の内勤務です!もしよければお返事いただけると嬉しいです。
とりあえずこうメッセージを送ってみたものの、人気そうだから返信が来るかどうかわからない。のんびり待つか…と思っていると、比較的すぐに彼女から返信があった。
そこから何度かメッセージのやり取りをしたのだけれど、僕としては早く会いたい。一度会うと、大概わかるものだから。
― K:いきなりディナーでも大丈夫ですか?時間的に長くなってしまいますし、サクッとお茶とかランチが良ければ遠慮なく言ってください!
そう送ると、向こうも快諾してくれたので、僕は丸の内にある、華やかでデートにも最適な『THE UPPER』を予約した。
先に着いて待っていると日奈子がやって来たので、僕は席を立って挨拶をする。
「初めまして、恭平です。日奈子さん、ですよね」
「初めまして、日奈子です。お写真より…身長高いんですね」
「そうなんです、無駄に高くて。日奈子さんも、お写真と変わらないというか、可愛いです」
言葉の通り、日奈子は加工もそこまで施してなかったのか、写真の通り可愛かった。黒のロングワンピースが、日奈子の肌の白さを引き立てている。
注文を終えて、僕たちはすぐに話し始めた。初対面だったけれど、日奈子も自分から色々と話してくれて、僕は嬉しかった。
「そうなんですね、そんな長く付き合っていた彼とお別れしたからアプリを…」
4年も交際していた彼氏と別れて、アプリを使い始めたらしい。「可愛いくて良い子だし、なんで彼氏がいないんだろう?」と不思議に思っていたのだけれど、この話を聞いて納得した。
それと同時に、ずっと一人と交際していたということは、「遊んでいないんだ」という安心感も芽生えた。
「そうなんです。でも恭平さんの方こそ、すごくモテそうなのに」
「いや、たしかに飲み会とかは多いんですが、あまりピンと来なくて」
そして適宜ツッコミを入れながら、ずっと笑顔でいる日奈子。僕のくだらない話にも、本当に楽しそうに笑ってくれている。
「日奈子さんって、何を話しても笑ってくれるし、ずっとニコニコしているから、勘違いしそうです」
「恭平さんのお話が面白いからですよ!」
「本当ですか?よかった。僕関西出身なせいか、“面白い”って言われるの、すごく嬉しいんです」
「関西のどこですか?私、母が関西出身で」
日奈子の楽しそうな顔を見ていると、僕も心地よい。
明るい雰囲気でしっかり反応してくれると、嬉しくなる。そして何より「あれ?これって、頑張ればいけるのかな」という期待も抱く。
だから僕はすぐに、彼女を次のデートに誘った。
この記事へのコメント
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このフィーリングが合う人っていそうでいない。
???? 大勢いるけど。確かに、ビーガンだのグルテンフリーだのこだわってる人とは無理だけど、お酒飲むタイミング? だいたい皆一緒じゃない?昼間から飲むなよとか言ってくるオカンタイプもそうそういないだろうし。
面白過ぎるアンサー記事!