A2:結婚相手として考えると、厳しかったから。
ちょうど横浜に住む裕二のお母様が来る予定の日に私と約束をしており、急に裕二が「今度、母親と会わない?」と言ってきた。
― これって…結婚への、第一歩!?
そう思うと、絶対に失敗はできない。下手な印象は残せないし、最大限に気を使う。
「どうしよう、手土産とか何がいい?服装は?」
しかし裕二に聞いても、かなり適当だ。
「大丈夫だよ。手土産もいらないし、服装も適当でいいよ」
「そんなこと言われても…それはだめでしょ」
こういう時、男性は本当に役に立たないと悟る。だから私は色々調べたり。友人に聞き込みをし、赤坂の老舗の和菓子屋の和菓子を手土産にした。
そして派手になりすぎないよう、少し地味なネイビーのワンピースで、待ち合わせの汐留にあるラグジュアリーホテルへと向かう。
しかし私の服装を見るやいなや、裕二はかなり失礼なことを言ってきた。
「結衣、さすがにちょっと地味過ぎない?」
― いや、誰のために私がこんなに頑張ったと思っているの?
さすがにこの発言は、腹が立つ。でも今怒っても仕方ないし、私は一生懸命笑顔を作った。
「これくらいでいいでしょ」
「うーん。もう少し華やかなほうがいいと思うけど」
― ダメだ、本当に腹が立つ。
どうしてこう、口が悪いのだろうか。「気を使ってくれてありがとう」とか、一言でいい。私に対する愛が…いや、他人に対する思いやりがなさすぎる。
そんな思いを抱えたまま、裕二のお母さんとご対面となった。
「初めまして、土田結衣です」
「初めまして、裕二の母です」
上品そうな方で、悪い人ではなかった。しかしもちろん、質問攻めだ。モダンフレンチレストランで美味しい食事をしながらも、私はひたすら粗相がないように気を張り続ける。
「結衣さん、ご出身は?」
「私は長崎になります」
「ご両親は、今も長崎に?大学はどちら?」
「はい、両親は長崎にいて、大学は都内の四大を出ています」
「お仕事は?」
「仕事は現在、出版社に勤務しています」
こうして、“彼氏のお母さんと会う”というミッションを無事に終えた私。でも終わった途端に、なぜか突然すごい虚しさにも襲われた。
そしてここから1ヶ月くらい経った頃。裕二が、食事をした後に突然私に問いかけてきた。
「そういえば、結衣って子ども欲しいの?」
「え?どうしたの、急に。もちろん欲しいけど」
「そっか、なら良かった」
― 良かった…?…ん?良かったって、何??
この一言で、私の中で何かが崩れた気がする。
◆
それからしばらくして、私は意を決し、裕二に別れ話を切り出した。
「私、裕二と結婚することが想像できなくて。でも、私は結婚がしたい。だから、もう別れよう」
「嘘だろ?なんで?」
「うまく言葉にできないんだけど…結婚が考えられないから、別れて欲しい」
すべて、この言葉に詰まっている。
彼氏としてだったら良かったのかもしれない。でも結婚となると生活になり、子どもを持つ将来も描く。そして、お互いの親と“家族”になることを意味する。
そう考えた時に、裕二ではなかった。たしかにお金は稼いでいるし、結婚すれば将来安泰だろう。
でもそこに愛はあるのだろうか?
「待って、結衣」
「ごめんね。今までありがとう」
好きだけど、結婚はできない。
好きになる相手と結婚相手とは別物。そう私は悟った。
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令和の結婚してはダメな相手“3C”は、本当にダメなのか?
この記事へのコメント
例えば、「線が細い印象だった裕二。交際後にわかったけど実際に裕二は食に細かい」実際にと言うなら割と少食だったとかでしょう。男性に対して線が細いと言うのは、ひょろっとしてて頼りないとか華奢で鍛えてない弱々しい印象、繊細で気が小さいそうとかで、直接的に「食にこまかい人」とまでは結びつかない。
昨日から言われてる「長崎になります」も強烈。
出た、下手くそ。