A1:この時の気持ちは、嘘ではなかった。
友美と出会ったのは、恵比寿で開かれた食事会だった。同じ歳ということもあり、彼女とは、最初から会話が弾んだ。
解散した後も、「もう少し話したいな」と思ったので、早速デートに誘ってみることにした。
すると向こうからも「ぜひ」と来たので、僕は広尾にあるお気に入りのイタリアン『LA BISBOCCIA』を予約した。
イタリアのトスカーナ地方を彷彿とさせる店内の明るくて陽気な雰囲気と、何を食べても美味しい料理は、何度来てもテンションが上がる。
「ここ、来たことある?」
「初めてですって言いたいけど…実は大好きなお店で」
「そうなんだ!でも嬉しい。レストランの好みが似ていて」
好きな店のテイストが似ているとわかり、嬉しくなった。そして二人揃って、ワインが進む。
「光宏くんは、普段どの辺りで飲んでいるの?」
「僕は六本木とか西麻布かなぁ。最近、神楽坂とか荒木町も行くけど。友美ちゃんは?」
「私は恵比寿、六本木とかかなぁ」
遊んでいるエリアも近く、話しているうちに自立もしていることが垣間見える。自立している女性は大歓迎だ。だから僕も、少し前のめりになる。
「じゃあ今度は六本木エリアのほうにしようか。そういえば、行きたい店があってさ…」
「行きたい!いつにする?」
そんなことを話しているうちに、特に意識はしていなかったけれど、夏の予定の話になった。
「毎年夏にバケーション取るんだけど、今年はバリに行こうかなと思っていて。友美ちゃんは、旅行とか好き?」
「うん、大好き。バリ島も去年行ったよ」
「そうなんだ!今度一緒に行く?(笑)」
「え?いいの?」
最初は、完全に軽いノリだった。「白トリュフのリゾット卵黄のせ」を食べながら、なんとなく誘ってみただけだった。
「友美ちゃんとだったら、一緒に旅行したら楽しそうだよね」
「私のほうこそ、光宏くんと旅行できたら楽しそう」
しかしここまで話して、僕はふと考えた。同じ歳で話も弾む。旅行をしても楽しそうだし、趣味も合う。
それに、自立しているから僕にがっつり依存してくることもなさそうだ。そして気がついた時には、こんなことを口にしていた。
「友美ちゃんって、今彼氏とかいるの?」
「いないよ」
「じゃあ…付き合う?」
友美と付き合うのは、ごく自然な流れのように思えた。だから言った後も、なんだか僕の中ではすっきりした気持ちでいた。
もちろん、驚いていた友美。しかしすぐにYESと答えてくれたけれど、すぐさま釘も刺された。
「もちろん。でも私、結婚がしたいんだよね」
― そりゃそうだよな。
年齢も考えると、交際の先に結婚があるのは当然のこと。それに僕だって結婚したい。
「もちろん僕も結婚したいし、そこはちゃんと前提にしよう。お互い、良い年齢だしね」
この時は、本当に考えていた。友美と交際した先にある、結婚を。
しかし時が流れていくうちに、僕はどんどん結婚に対して億劫になっていく…。
友美だけが悪いわけではないけれど、彼女のある言動に、嫌気が差していったのだ。
この記事へのコメント
いやいや読者には友美が自立している大人の女性とは到底思えなかったけど😂 自立と書くだけでなく具体例なども交えて欲しい。
“自立しているから僕にがっつり依存してくることもなさそうだ”
えーーー?もう一秒でも早く結婚して精神的経済的にガッツリ寄りかかろうとしてる女かと思うけど。 とりあえず友美の職業は最低でも書いて欲しかった。