Q1:「結婚を前提に」と言った彼の言葉は嘘だった?
光宏と出会ったのは、恵比寿で開催された食事会だった。証券会社勤務。高身長で少し目が細くて柔和な笑顔に、最初から「いいな」と思った。
しかも同じ歳だということもわかり、最初から話は盛り上がる。そして連絡先を交換し、1週間後には二人で飲みに行く約束をしていた。
初デートで、天現寺交差点すぐの『LA BISBOCCIA』を予約してくれていた光宏。何度訪れても、この本場イタリアさながらの陽気な雰囲気と空間に、心がパァッと華やぐ私も大好きなお店だ。
「ここ、来たことある?」
「初めてですって言いたいけど…実は大好きなお店で」
「そうなんだ!でも嬉しい。レストランの好みが似ていて」
まずはグラスを傾け、乾杯をする。今日の光宏はオフモードなのか前髪を下ろしており、それもまたカッコよかった。
「光宏くんは、普段どの辺りで飲んでいるの?」
「僕は六本木とか西麻布かなぁ。最近、神楽坂とか荒木町も行くけど。友美ちゃんは?」
「私は恵比寿、六本木とかかなぁ」
「じゃあ今度は六本木エリアのほうにしようか。そういえば、行きたい店があってさ…」
「行きたい!いつにする?」
話していくうちに、自然と次のデートまで決まっていた。
そして何より嬉しかったのは、光宏は、今後の話をしてくれた。しかも未来の予定に、ちゃんと私がいることだった。
「毎年夏にバケーション取るんだけど、今年はバリに行こうかなと思っていて。友美ちゃんは、旅行とか好き?」
「うん、大好き。バリ島も去年行ったよ」
「そうなんだ!今度一緒に行く?(笑)」
「え?いいの?」
ただの口約束だし、ふわっとしている。それでも、こうやって二人で先の計画を一緒に立てられるなんて、この先に進めるという確約がとれたようなもの。
周りの楽しそうな笑い声が、私の心の中にも心地よく響き渡る。「白トリュフのリゾット卵黄のせ」を食べながら、思わず笑みがこぼれ落ちる。
「友美ちゃんとだったら、一緒に旅行したら楽しそうだよね」
「私のほうこそ、光宏くんと旅行できたら楽しそう」
初デートで、“この先”のことを話してくれるのはだいぶ嬉しい。
思わず口角が上がってしまう。ワインを飲みながら体温も上がってきてご機嫌でいると、光宏がこちらを見つめている。
「友美ちゃんって、今彼氏とかいるの?」
「いないよ」
「じゃあ…付き合う?」
「え?」
デザートを食べるタイミングで、私は思わず聞き返した。二人でいるのは楽しいし、ごく自然な感じもする。それに結婚がしたい私にとって…普通に考えて、彼と付き合わない理由はない。
「もちろん。でも私、結婚がしたいんだよね」
「もちろん僕も結婚したいし、そこはちゃんと前提にしよう。お互い、良い年齢だしね」
こうして、晴れて交際することになった私たち。
最初のうちはお互いの価値観の違いなどでちょっとしたケンカもしたけど、次第に減り、私たちの関係は安定していった。
そして半年が経つ頃には、すっかり半同棲のような感じになっていた。
この記事へのコメント
→ 傷害事件とかに発展しそうな勢い。