鶏焼肉という珍しさ。そして『南青山 七鳥目』との奇跡のコラボで、オープン当初から話題になっていたけれど、この名店のタッグは美味しいに決まっている。
そして焼き方が難しい鶏肉も、焼き師の方が丁寧にサーブしてくれるので、お任せもできて安心だった。
「健太さんって、グルメなんですね」
「食べることが好きなのと、外食が好きで」
「わかります!心が華やぎますよね」
話していると、好きなテイストが似ており、嬉しくなる。
「でもそんな外食が好きで、春香さん、よくそのスタイルキープできていますね」
「その分、頑張って運動しているので」
「え!僕も運動好きです。何をされているんですか?」
「私は今、週1でパーソナルに通っています」
「本当に?僕もです」
しかも健太もジムへ通うのが好きらしく、そのあたりの話でも盛り上がった。
「ちなみに春香さんって、どういう男性がタイプなんですか?」
「私は、頭がいい人かな。あと優しくて、尊敬できる人が好きです。健太さんは?」
そして、ちゃんとお互いの恋愛の話もできたのはかなりポイントが高い。さらに、健太はしっかり、私のことを「恋愛対象です、アリです」と明言してくれた。
「僕は一緒にいて楽しい人かな。春香さんみたいに、たくさん飲んで、たくさん食べて、笑顔が素敵な人とか。すごくタイプです」
アップグレードして、『南青山 七鳥目』直伝の「親子丼」にしてもらった〆を目の前にして、思わず頬が紅潮する。そう言われて嬉しくないはずがないし、これは先に進められる可能性が大いにありそうだ。
だから私も、とろとろの卵が口の中で溶けていく「親子丼」に感動しながらも、ちゃんと聞いてみることにした。
「健太さんって、今彼女とかいないんですか?」
でもこの質問に対する健太の返事に、私は一瞬、箸を持つ手が止まる。
「いないですよ。適当に遊んでいるような相手はいますが、本命はいないです」
― どういうこと?
今、目の前には私がいる。それなのに、「適当に遊んでいる相手がいる」と言うなんて、だいぶ失礼な話だ。
しかし健太は気にしていなそうだし、むしろちょっと自慢げだったので、少しだけ嫌味を言ってみる。
「おモテになるんですね」
「いや、どうなんでしょう。本気で好きになれるような人がいなくて。春香さんは?」
「私も、今フリーです」
「そうなんだ」
― これは一体…。
モヤモヤしたけれど、一旦受け流すことにした。まだ29歳だし、遊びたい年頃だろう。それに、楽しかったから2軒目へも行ったのだけれど、そこでも盛り上がれたし、また会いたいと素直に思ったから。
「春香さん、また会いたいです」
「私もです」
だから次のデートの約束もした。それに、会うまで連絡もこまめに取り合えるほど話題もあった。
しかし二度目のデートで、“一旦休止”となってしまった…。
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文章のセンス無さ過ぎ