絶対に負けられない接待が、今宵はある Vol.3

『クチーナ・ヒラタ』で部下との熱い契りを。

新宿の大手百貨店の新システム構築案件を受注し、先方の社長への御礼会食も実施した。これからチームを組成してプロジェクトに入る。私は全体を統轄する事業部長として、この重要な案件に全幅の信頼を寄せられる現場のプロジェクトマネージャーを任命する必要がある。

少し考えた後、まだ粗削りだが情熱に溢れ、決して逃げない姿勢がメンバーからの信頼も厚い小久保(32)を抜擢しようと決めた。小久保にとっても大きなチャレンジとなるビッグプロジェクトだが、私は部下にはいつも自分のサイズ以上の仕事を託すことがポリシーだ。

—新規プロジェクトのことで話したいことがあるので、時間をもらいたい。5日木曜日の19時に麻布十番で落ち合えないか?—

—坂本さん、お誘いありがとうございます。宜しくお願い致します—

部下と食事をするにもいくつかのシチュエーションがある。日頃の仕事を労うためのカジュアルな会、懇親のために多少のバカ騒ぎも厭わない会、そして今回のようなオフィシャルな話題を交わすセレモニーのような会。

『クチーナ・ヒラタ』はかれこれ5年ほど行きつけのイタリアンだ。クラシカルなリストランテだが、マダムの平田さんの人柄もあり、店内に入ると意外に寛げるアットホームな雰囲気が気に入っている。それでいて、味は別格。今回のような部下とのオフィシャルな会食に、何度なく重宝してきた。

「坂本さん、お久しぶりです。新規プロジェクトの話ってどんな話でしょう?」

多少の雑談の後、スペシャリテの「カッペリーニ からすみのせ」が運ばれてくるあたりで、小久保が口火を切った。

「新宿の大手百貨店のシステム導入のプロジェクトが受注できた。15億ほどの案件だ。そのプロジェクトマネージャーをお前に任せたい」

「本当ですか?」

小久保はまだこの規模の仕事の経験はない。だが、ここらで大役を任せることに賛成してくれた社内の幹部も多かった。もちろん、大平副社長もだ。

「相手は大手百貨店。一筋縄ではいかない困難なプロジェクトだからこそ、情熱ある君にやってもらいたい」

「承知しました!謹んでお受け致します」

小久保は驚きを隠せないながらに、自信に満ち溢れた表情に切り替え、快諾してくれた。よし、今夜は飲もう。奮発して少し高めのワインをボトルで入れた。

会計はいいワインを入れたこともあり、1万円のコースにワインボトル1本1万円で消費税サービス料込み3万3,900円。小久保にとっては大型プロジェクトを初めて任される記念すべき日だ。これくらいの誠意は見せておきたい。


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