絶対に負けられない接待が、今宵はある Vol.1

アポ帰りの17時。副社長と『尾崎幸隆』の和牛で一杯

あれは暑さが残る初秋の夕方だった。新宿にある大手百貨店に新規のシステム導入の最終提案に副社長の大平祐一(58)と共に臨んだ帰り道だった。

「17時か。会社に戻るのも微妙な時間だな。坂本、たまには一杯やってくか」
「そうですね。ぜひ」

おっと、まさかの突然の副社長とのサシでの食事機会。接待というほど堅いものではないが、夕食を共にしてコミュニケーションを円滑にし、仕事を進めやすくする大チャンスだ。

「いくつか店を当たりますので、少々お待ち下さい」

とはいえ、急遽こういう事態になるのは焦る。こういう時のためにも、各ターミナル駅に気軽に入れる店が1軒はすぐ頭に出てくるようにしておきたい。堅すぎずカジュアルに…。副社長がおそらくご馳走してくれるとはいえ、予算は一人1万円には抑えるべきだ。

「麻布十番のカジュアルな懐石のお店があるのですが、いかがでしょう?」
「わかった。タクシーを拾って向かおう」

向かったのは『尾崎幸隆』。宮崎県産の尾崎牛と本マグロにこだわるカジュアルな割烹店。マグロで攻めると話題の銀座の鮨『とかみ』と姉妹店のようだ。

ここはお任せのコース1本のみ。メニュー選びに気を遣わなくて済む点も良い。副社長と対面で2時間以上語らうよりは、カウンターにした方が気楽だと思い、予約時にカウンター席を取っておいた。個室もあるので、いざとなれば個室に切り替えることもできる。

「ほう。和牛と本マグロか。ありそうでない組み合わせだな」

大平副社長も珍しがっている。10品以上あるがサイズは小さく、コースを完食するとお腹としてはちょうどよい具合だ。

「この年になるとガツンとした肉を食うと胃がもたれるんだが、ここはもたれないな。いい肉を使っている証拠だ。それはそうと坂本、今日の案件は受注できれば15億以上の仕事だ。チーム編成についてはいつでも相談にくるようにな。しっかり頼むぞ」

思い返せば大平副社長には新卒の頃から目をかけてもらっていた。ここらで大きいプロジェクトを成功させ、恩返ししたい。ニヤリと笑う大平副社長の表情も、どこか満足げで上機嫌だった。


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