運命なんて、今さら Vol.5

11歳年下の女子大生に恋愛相談してたら、意外な展開に。恋愛に奥手な32歳男は…

大将がにこやかに頷いたのを見て、寿人は、結海とのあれこれを、小声で説明しはじめた。

「で、結海さんはこう言ったんだ。“実は今、元カレと別れたばかりで、うまく終われてなくて、不誠実なことはしたくないから、寿人さんとは2人で飲まない”って」

しばらく話をきいていた華は、「不誠実」とぼそっとした声で繰り返す。

「つまりな、結海さんは、元カレを忘れられてないんだと思う。そんな子にアクションしてしまって、申し訳ないと思った」

「……」

「もちろん、あの日は会えてうれしかったよ。でも、そんな事情があるんなら、別に会ってくれなくてもよかったのにな」

寿人は、傷を隠すように笑う。

あの日、結海は、とても華やかな印象だった。でも、どこかに影を感じさせた。パワハラ気質の上司、実家の手伝い。そして、元カレ。なんだか、とても苦しそうに寿人には思えた。

― 別れたのに忘れられないくらいの、素敵な元カレなんだろうな。そりゃ、結海さんと付き合えるような男性だもんな。


そのとき、華は言った。

「え、お兄ちゃんめちゃ勘違いしてない?」

「へ?」

「彼女の言葉って…2通りの意味があるなと思ったの」

「2通り?」

「結海さんが、元カレに不誠実したくないのか。お兄ちゃんに、不誠実したくないのか。意味合いが真逆になるじゃん」

華は、寿人のほうに少し身を近づける。

「結海さんって人の元カレがしつこいか何かで、うまく別れられないんじゃない?別れてからお兄ちゃんとしっかり向き合いたいって意味じゃないの?」

「え…。でもさ、好きでもない相手と別れられないなんて、そんなことある?一体どんな事情だろう」

「そんなの知らないよ。その結海さんに聞いてみたらいいじゃん」

「ダメだろ、それはキモい」

「何もしないでうじうじしてるほうがよっぽどキモいよ?」

「……」


「聞かなきゃ、判断のしようがないでしょう?勇気を出してアクションしてください」

一回り年の離れた妹に諭されると、なんだかぐさっとくる。思わず黙り込んでしまった寿人をいいことに、華はにっこり微笑みながら、ウニの軍艦に手を伸ばした。

寿人は、そっと自分のおちょこに冷酒をつぐ。

たしかに華の言葉は一理あると、寿人は思った。傷つくのが嫌なあまり、結海とコミュニケーションをとることから逃げて、勝手にあきらめていた。自分の情けなさが、胸を重たく覆う。

「にしてもさ」

華は、突然苦笑い顔を作る。

「パパもママも、ひどいよね」

この記事へのコメント

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No Name
展開が遅過ぎるなぁ、簡単に言うと今日は妹と鮨食べただけ。
2025/02/05 05:1511返信3件
No Name
華のアドバイス、しょうもな。堂々とアクションするのだ!って、結海は寿人に対して不誠実になりたくないと言う意味だから、少し待って様子を見る方が上手く行くと思うけどねぇ。結海の言葉足らずで、あれでは意味深と言うか本心が伝わってない。そもそも結海のどこがそんなに良くて運命感じてるんだろう? 寿人にはもっとステキでふさわしい女性が沢山いるのに。
2025/02/05 05:357
No Name
柴犬で黒が生まれる確率は全体の1割程度でかなりレアだと聞くけど、ペットショップに一年半もいたなんて....
その素敵な飼主さんと誰かが繋がってるか、何かをほのめかしている?
2025/02/05 06:026
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