表紙カレンダー Vol.124

「26年の人生の中でも、すごく大きな出来事」港区を席巻した和食店で語った、齋藤飛鳥の胸の内とは

白金商店街から程近く、ひっそりと潜む和食店。カウンター10席の『白金 芯』は、今年6月のオープン以来、食通の間でも話題を呼んでいる。

そんな“最強の新店”に、齋藤飛鳥さんをお連れした。「26年の人生の中でも、すごく大きな出来事」と語る大作の公開を間近に控えたタイミングだ。

この1年を振り返って今、彼女が思うこととは。



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「見てほしいけど、いや怖いかも。そんな気持ちです」

齋藤飛鳥


期待に応える。それがどれだけ難しいことなのか、齋藤飛鳥さんほど身をもって知ってる人はいないだろう。

乃木坂46のセンターとしてスポットライトを浴びた日々から卒業して1年半。俳優として歩み始めたかつてのトップアイドルは今また、“アイ”として全世界の注目を一身に浴びている。

「撮影自体は今年の3月で終えていますが、それでもやっぱりアイちゃんを演じたことは、今年の中でもすごく大きな出来事ですね。26年の人生の中でも、かなり上位なんじゃないかな」

世界中を熱狂させている『【推しの子】』。その実写化作品の公開がいよいよ、来週に迫っている。Amazon Prime Videoでのドラマシリーズと東映配給の映画という構成もまた異例。原作ファンのみならずとも、日に日に注目は高まる一方だ。

そんな話題作で最も重要な役どころ、アイ役を務めるのが齋藤飛鳥さん、その人だ。

インタビューが行われたのは10月中旬。彼女の瞳は、まだ揺れ動いているように見えた。

「この作品にかける全スタッフさんたちの情熱は制作中、痛いほど伝わってきて知っています。みんなの熱量が形になった作品が早く届いてほしいとも思います。

ただ、アイちゃんを演じた身として個人的な気持ちだけで言えば、そりゃあ、怖さもありますよね」

のっけから正直に不安な胸の内を吐露した齋藤さん。だが、無理もないだろう。原作が多くの人に愛されるものであればあるほど、実写化へのハードルは高くなる。彼女もそれを知っているからこそ、一度は出演オファーを断ったという。

それでも「齋藤飛鳥でないと」という制作サイドの熱意に動かされ、演じる覚悟を決めた。試写を見た感想は?

「実写化した理由や生身の人間が演じることで生まれる説得力みたいなものは、画面越しに伝わったらいいなと思っていて。贔屓目かもしれないですが、私は楽しめました」

2024年、新たな仕事に邁進した齋藤飛鳥の現在地


トップアイドルながら、2児の母という設定の“アイ”。「この芸能界において嘘は武器だ」というあのコピーを齋藤さんはどう捉えたのだろうか。

「“嘘はとびきりの愛”っていうセリフだけを捉えると、ずる賢くも見えますよね。でも演じてみて思ったのは、アイちゃんはそんな意図で言ったんじゃないだろうなと。

アイちゃんの心の内には強さも弱さも同居してるんですね。周りの人を愛することも愛されることも、本当はちゃんとできる人だし、それを求めていたと思います。

だけど何より、まだ自分を愛せていなかったんだ、と、演じてみてアイちゃんの人間味のようなものに触れた気はします」

自身も、嘘をつくことを公言している。

齋藤飛鳥

食材を聞いて、驚きつつ口に入れると「初めて食べたけれど、すごく美味しい。味がお洒落」と齋藤さん。和食は好きだが意外と食べに行く機会は少ないという。「お鮨ではなく、和食で行きつけのお店ができたら、それはもう大人ですね」と笑顔を見せた


「こういうインタビューもそうですし、自分から発信するものに関しては、基本的にはめちゃくちゃ嘘ついたりします(笑)。

でも同時に、嘘ついてますよ、っていうことも言っちゃう。それはちょっと笑いにしたい気持ちで、一種の逃げでもありますよね。

でも、アイちゃんはそうやって逃げることなく嘘をつき通す。演じ続けることができる。そこが私と違う。それはカッコいいなって思います。プロフェッショナルで」

本作では初めての母親役も経験。アイドルを目指す我が子を温かく見守り応援する母を演じているが、もし自身の子供が「アイドルになりたい」と言ったら?

そう質問をぶつけてみると、「考えてみたこともなかった……」としばし無言。そして、「んー…、嫌かもしれないです。止めちゃうかも」と続けた。理由は?

「私は約12年アイドルをやらせていただいたけれど、本当にすごく運が良かったんです。

乃木坂46という素晴らしいグループに加入できて、最後は東京ドームという大きな舞台で卒業公演までやらせてもらえた。幸せなアイドル人生でしたけど、それは努力だけではなく、本当に出会いに恵まれて運が良かっただけ。

もし自分の娘がやりたいと言ったら、私が見てきた景色や経験をできるだけまっすぐ、素直に伝えるのみですね。最終の決断は娘に委ねるとしても、猛プッシュはしないかなぁ」

やはり、齋藤さんは嘘がつけない人だ。でもそこがまた、“らしい”部分でもあるのだろう。自分の足で歩き始めて約1年半。かつての古巣を今はどんな思いで見ているのだろうか。

「とんでもなく可愛いですね。マネージャーさんからメンバーの近況を聞いたり、観れるときはライブを観たりもします。

でも、外から見るとキラッキラしていて、あの場所に自分がいたとは全く思えない(笑)。むしろ、あれぐらいのキラキラを自分は発することができていたんだろうかと疑問ですね」

作品の中には当然、アイが所属するアイドルグループ「初代B小町」として、パフォーマンスを披露するシーンもある。

乃木坂時代とはまた異なるアイドル、齋藤飛鳥(アイ)を見ることができるのは、ファンにはたまらないだろう。そしてもちろん、キラッキラと輝いている。

「振りはすぐに入りましたね。B小町のダンスはすごくキャッチーなので覚えやすいっていうのもあるけれど、そこはまだ鈍ってなかったです(笑)」

「穏やかな日常の中の些細な優しさや愛に幸せを感じます」


大きな仕事を終え、2025年を目前とするいま、どのような心持ちで過ごしているのだろうか。

齋藤飛鳥


「賛でも否でも、真摯に受け止めますが……怒られたら悲しいは悲しいですよね。

かといって褒められても、すごかったのはスタッフさんだよな、あの時の照明きれいだし、カメラワークも素敵だったしな、と自分の手柄にするのは難しいですね。

褒めてくれなかったらそれはそれで、寂しくもなるくせに(苦笑)。

きっと、女優っていう肩書きがまだむず痒いからなんでしょうね。私、女優?そうかぁ……って。でも肩書きはともかく、いただいたお仕事では、しっかり自分の役目を果たしたい。

『【推しの子】』の“アイ”でも、それができていたら嬉しいです」

では、今後の目標は?

「平和に穏やかに暮らせれば、それだけでもう十分。アイドル時代、たくさんの大きな愛をもらって、あんなキラキラした世界にいさせてもらえた。だから、これ以上何かを求めてはいけないって思うんです。ほんの些細なことに愛を感じられる日常が今は本当に幸せだから」

アイから齋藤飛鳥へ。非日常から日常へ。どうか、齋藤さんの平穏が壊れませんように。

でもきっと大丈夫。言葉数は少ないけれど、期待に必ず応える。それが齋藤飛鳥という人だから。

■プロフィール
齋藤飛鳥 1998年生まれ。東京都出身。2011年、乃木坂46の1期生としてデビュー。2022年にグループを卒業後は女優、タレントとして活躍。11月28日配信スタートのドラマ、12月20日公開の映画『【推しの子】』では伝説のアイドル、アイを演じている。

■衣装
ドレス¥147,400、ジャケット¥80,300〈ともにCreate Clair/THE PR TEL:03-6803-8313〉、ドアノッカーピアス¥115,500、イヤカフ¥81,400、バイカラーダイヤモンドリング¥48,400、ダイヤモンドリング¥88,000、ホワイトトパーズ2連リング¥72,600、オニキス2連リング¥72,600〈すべてHirotaka/Hirotaka 表参道ヒルズ TEL:03-3478-1830〉


▶このほか:「乃木坂46に革命を起こせる人になりたい」20歳になった筒井あやめの決意表明



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