2024.11.29
年収4,000万男子の恋愛事情 Vol.12「昔は結婚と引き換えに、自由を奪われるなんて絶対嫌だって思ってたんですよ。結婚にメリットなんてないって」
結婚している友人と飲んでいる時、「妻が帰って来いってうるさくて」とか「土日は子どもと遊ばなきゃいけない」みたいな愚痴を聞くことがある。
数年前はただ「可哀想だな」と思って聞いていた。
しかし、年齢を重ねた今は違う。
帰りを待ってくれている人がいることが、羨ましく、愚痴が自慢に聞こえてしまうくらいだ。
「会社を経営しているから、もちろん守るべき人達はいるんですよ。社員やその家族、それに取引先の人とか。でも、プライベートで守りたい相手が俺にはいない。それが最近は身に沁みるんですよね」
俺はふたりに本音を打ち明けた。ここまでの素直な気持ちは、親友の元太にすら話したことはない。
「今まで、煩わしいと思っていた責任とか制約とかが羨ましい…むしろ欲しいんです。すごく」
「うんうん」
秋山はなぜかオロオロしているが、ミナは口を挟むことなく相づちを打ちながら、聞いている。
「独身であり続けることは、恋愛だけじゃなく日々の生活そのものが果てしなく自由じゃないですか。
家で夕食をとるのか要らないのか、いちいち誰かに伝える必要がないし、何時に帰宅しても怒られない。だけどその反面、めちゃくちゃ寂しい夜があって…」
― あれ。俺、なんか泣きそうだ。
「だから、その寂しさを紛らわせるために適当な女の子と過ごしてきたのかな〜。お金さえ出せば、美人と簡単に出会えるからさ」
ヤバいと思いむりやり笑顔を作ったが、ミナの顔は曇っていた。
同情されているのか、それとも引いているのか。俺は彼女の顔を直視できなかった。
「結婚なんか『しようと思えばいつでもできる』って、私もずっと思ってた」
ミナが言う。
「一応芸能界にいた時は、ファンがたくさんいたし、夜遊びに行けばどこへ行っても会計は誰かが済ませてくれて、チヤホヤされるから勘違いしてたんだよね。
でも、本当は本気で誰かを愛したことも、愛されたこともない。そんな状態のまま29歳まできちゃった」
― そうか、ミナちゃんは普通の女の子とはちょっと違う20代を過ごしてきたんだよな…。
俺は、親父がやっていることと似た領域で会社を経営しているし、何なら取引先も紹介してもらった。
若い頃からカジュアルな会食には時々連れていってもらったりもしてたし、資本金こそ自分でなんとかしたが、ゼロからのスタートとは言えない。
それに比べて、ミナはコネもツテもない状態でアイドルを目指したと聞いている。
今でこそ秋山に仕事を紹介してもらっているが、きっと、かなりの努力や苦労をしてきたはずだ。
― ミナちゃんが恋愛に没頭できなかったのと、俺が本気で相手に向き合ってこなかったのは別物だ。
そう思うと、余計に自分が情けなく思えた。
しかし、ミナはそんな俺の思考を見越してか、すべてをまるっと言葉で抱きしめてくれた。
「翔馬くんが今、恋愛や結婚に真剣に向き合おうとしているのは、これまで仕事最優先で頑張ってきた証なんじゃないかな。
余裕が出てきたからプライベートを充実させたい。そう思うのは、当たり前の感情の変化だと思うよ」
「ミナちゃん、ありがとう」
俺は思わず、彼女を抱きしめたくなった。
「私はまだ、そこまでのフェーズには行けていない自覚はある。でも…」
ミナがそこまで話したところで、秋山が「翔馬くんごめん!」と言った。
― 急になんだ??
何事かと思っていると、次の瞬間、個室のドアが勢いよく開く。
「翔馬くん!」
そこに立っていたのは、いつもよりかなり薄化粧の香澄だった。
俺はハッとして秋山を見ると「申し訳ない」と口パクで言い両手を合わせている。
その言動とさっきまでの秋山の様子から、彼が香澄にこの場所を教えたのだとわかった。
香澄は肩を震わせながらミナを睨みつけ、その後俺に抱きついてきた。
「ごめんなさい…!軽井沢で秋山さんとふたりで飲んでいたって聞いて、嫉妬しちゃったんだよね。だから連絡くれなかったんでしょう?」
― 嫉妬…?
俺は大きなため息をついた。
まずは、香澄との関係をどうにかしなければならない。
「香澄、ちょっとここを出ようか」
俺は、秋山とミナに詫びを入れ、彼女を連れて外に出た。
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