貴方の香りに恋して Vol.9

「何これ…」彼の車の収納を開けたら、領収書の山が。それで発覚した、男の嘘とは

ふとすれ違った人の香りが元彼と同じ香水で、かつての記憶が蘇る…。

貴方は、そんな経験をしたことがあるだろうか?

特定の匂いがある記憶を呼び起こすこと、それをプルースト効果という。

きっと、時には甘く、時にはほろ苦い思い出…。

これは、忘れられない香りの記憶にまつわる、大人の男女のストーリー。

▶前回:「あの時、なぜ手放した…?」恋愛迷子の34歳女が気がついた、20代で失った恋の痛すぎる代償


優佳(32歳)彼との同棲
Maison Margiela Fragrances「レプリカ レイジーサンデーモーニング」


「窓から海が見えるなんて、夢みたい…」

優佳は、寝室のブラインドの隙間から見える海を見て、呟いた。隣のベッドには、先月から一緒に住み始めた恋人、正義が気持ち良さそうに寝息を立てている。

「さ、朝ごはんでも作ろうかな」

優佳は、ベッドから立ち上がり、キッチンに向かう。リビングに続くキッチンからも、海が見える。部屋に差し込む冬の太陽はあたたかで、窓の向こうに見える地平線はキラキラと輝いている。優佳が目にしているのは、ずっと思い描いていた幸せの光景だ。

電気ポットで湯を沸かし、キッチンボードからティーポットとカップを2つ取り出す。

正義と一緒に住むことになった時、優佳は住み慣れた港区から湘南に引っ越した。一緒に住むなら、海の見える一軒家がいい、と正義が言い出したことがきっかけだ。

そもそも正義との関係自体が、優佳にとっては夢のようなこと。友達の紹介で知り合い、食事の席がお開きになる頃には、優佳はすでに正義を好きになっていた。優佳の人生で、こんな経験は一度もなかった。

正義は、今まで会った誰とも違っていた。

決して爽やかなスポーツマンタイプでもないし、男らしく引っ張ってくれる感じでもない。ただ、端正でセンスがよかった。仕事は建築士で、知り合った時、彼は29歳で、優佳は28歳だった。

この記事へのコメント

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No Name
レイジーサンデーモーニングどんな香りなんだろう...
この連載好きだから、久々に(今年初めて?) 更新が有って嬉しかったです。是非、毎週更新に戻してください!!
2024/12/02 06:0821
No Name
一人で産んで育てる事にしました的な超ありきたり話かと思ったら、許したんだね。
許せないけど水に流したからのこそ今の平和な生活が有るんだよね。
2024/12/02 05:5315
No Name
香りで当時の事を思い出してしまう(良き過去も辛い過去も) 本当にそうだけど、強い気持ちで前を向いている優佳はステキだよ♡ 目黒の家にもまた別のディフューザーを置いてるよね。
2024/12/02 06:0311返信1件
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