2024.11.08
年収4,000万男子の恋愛事情 Vol.9それでも香澄は止まらなかった。
「翔馬くんも見たじゃない。六本木のビルに秋山さんとミナちゃんが入って行くところ」
「そうだけど。だからと言って、香澄ちゃんが思っているような店で働いているとは限らないじゃん。どうしてそんなに突っかかるの?」
香澄の目にはうっすらと涙が溜まっている。
「だって……私や玲ちゃんが昼間頑張って働いているのに、ミナちゃんみたいな子たちは、夜の数時間チヤホヤされるだけで、私のお給料の何倍ももらって、麻布十番に住めるし犬も飼えるんだよ。必死に働いてる私たちがバカみたいじゃん」
― はぁ…思い込みが激しいな。
「あのさ、香澄ちゃん」
何って言おうか悩んでいると、ミナが立ち上がった。
「そんなに悔しがらなくても、私はそんな稼ぎ方はしていないし、それなりに苦労もしているよ」
ミナはそれだけ言うと席を立ち、食事もそこそこに2階へ上がっていった。
「……っ!!」
香澄も椅子から立ち上がると、そのまま外に飛び出していってしまった。
「ちょっと、香澄ちゃん!どこ行くの?夜は寒いよ〜!コートコート!!」
秋山が香澄の上着を持ちながら後を追う。本当は、香澄は俺に追いかけてきて欲しいと思っているのかもしれないが、とても追いかける気にはなれなかった。
「こ、こぇぇえ」
オロオロしていただけの元太が、やっと口を開いた。続いて、玲がハンバーグの最後の一口を食べ終えてから言った。
「ミナちゃんが料理上手だったのが気に食わなかったのかもね〜。こうもセンスの違いを見せつけられちゃあね」
「俺、ちょっとミナちゃんのところ行ってくるわ」
俺は元太と玲に告げると、2階の寝室へ向かった。
「ミナちゃん」
ノックをしてから呼びかけると、ミナはコムギを抱きながらドアを開けた。
「ミナちゃん、ごめん」
「どうして翔馬くんが謝るの?」
「それは…俺はミナちゃんの職業知ってるのに、上手くフォローができなかったから」
「あはは、いいよ別に。歌手やってるって言えなかったのはね、有名でもない上に自信がないから。だから、香澄ちゃんの言ってることも一理あるんだよね。
それに、秋山さんに夜の仕事を紹介されたのも事実。でも、この年齢から始めるのも無理じゃない?だから、断ったの」
「そうだったんだ」
ミナは香澄を相手にしていなかったわけじゃない。ちゃんと咀嚼した上で、あの対応をしていたのだ。
「もしかして、翔馬くんって香澄ちゃんと付き合ってるの?」
「いや…まだ。まだっていうのもおかしいんだけど、何回かごはんは行ったかな」
本当は香澄に好きだと言われていて、それを保留にしているのだが、なんとなくミナには言いたくなかった。
「そっか…。ごめんね、食事途中になっちゃったから、まだお腹空いてるでしょ。下に戻る?それともこのプロテイン飲む?」
「えっ?持ってきたの?飲まないよ。せっかくの料理、温め直して一緒に食べよう」
ミナと一緒に階段を降りると、下の階は妙に静かだった。
― あれ…リビングには元太と玲ちゃんがいるはずなんだけど…。
「あっ」
先を歩いていたミナが、両手で口を押さえた。
彼女の視線の先を見ると、リビングで元太と玲が抱擁し、その直後にゆっくりと唇を重ねていた。
― やっぱりそうなったか。
そう思った次の瞬間、俺のお腹がぐぅ〜と鳴り、ミナがクスクスと声を殺して笑った。そのやり取りがなんだか楽しくて、このまま時間が止まればいいのにと思ったほどだ。
「ミナちゃん、こんなところで誘うのおかしいかもしれないんだけど」
「ん?」
ミナが後ろを振り返る。
「東京に戻ったら食事に行かない?」
ミナは元太と玲のキスを見たときよりも驚いた表情で、俺のことを見ていた。
▶前回:「2人きりで旅行は微妙…」曖昧な関係の彼女に旅行に誘われたが、煮えきらない男は…
▶1話目はこちら:「LINE交換しませんか?」麻布十番の鮨店で思わぬ出会いが…
▶Next:11月15日 金曜更新予定
東京に戻った6人の関係に変化が…
香澄は人を不快な気分にさせる天才だと思う。香澄と結婚したらお金の搾取は勿論、しょっ中隣近所とかタワマンボスとかの 根も葉もない噂を流して嫌われる奥さんになるだろうね。
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