2024.11.06
マティーニのほかにも Vol.16東京に点在する、いくつものバー。
そこはお酒を楽しむ場にとどまらず、都会で目まぐるしい日々をすごす人々にとっての、止まり木のような場所だ。
どんなバーにも共通しているのは、そこには人々のドラマがあるということ。
カクテルの数ほどある喜怒哀楽のドラマを、グラスに満たしてお届けします──。
▶前回:10月になると思い出す元カノ。年上女に恋した42歳男が、独身を貫き通しているワケ
Vol.14 <マティーニ> 佐藤至(いたる)(36)の場合
夜が、好きだ。
バーカウンターの中に立ちながら至(いたる)は、改めてそう感じた。
コンテンポラリージャズの流れる、静謐(せいひつ)な空間。
磨き上げた木製カウンターでちらほらと交わされる、密やかな会話。
カウンターには様々な形のグラスが並んでいて、そのグラスの──カクテルのどれもが、不思議とそれを飲む人の“本当の姿”を表している。
心が、丸見えになる。そんな不思議が起きるのは、バーという場所をおいては他のどこにもない。
静謐で、密やかで、親密なカクテルの魔法。
その魔法を司る魔法使い…バーテンダーとして生きる夜の時間を、至はこの上なく愛しているのだった。
至がこのバーをオープンして、この秋でちょうど5年を迎えた。
三軒茶屋の住宅地という立地上、お客は決して、ひっきりなしの入れ食い状態というわけではない。
けれど、メイン層である近隣の住民や勤務者のお客のうち、ほとんどが数ヶ月から数年通ってくれている常連客だというのは、至にとっては理想的な状況といえる。
カクテルの魔法をもって、お客様の人生に寄り添いたい。いい時も、悪い時も。
それが、至がこのバーをオープンするときに願ったことだったから。
「ご馳走さま」と小さな声でつぶやきながら、目の下に大きなクマを作った40代の男性客が席を立つ。
― 彼の今夜の苦しみを、少しでも癒やすお手伝いができていますように。
店内にたったひとり残っていたお客様を見送りながら、至がそう考えたその時だった。
「こんばんは…」
女性客と入れ違いに、遠慮がちに首をすくめながら新たなお客様が入ってくる。若い男女の客だった。
その二人組の姿を見るなり、至は思わず微笑みを浮かべる。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
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