2024.06.08
アオハルなんて甘すぎる Vol.19「今回は、東京と大阪でホテルとのコラボレーションディナーの仕事があるから戻ってきたんだけど…3週間はパリの店を閉めることにしたから、その間は日本にいられるんだ。だからその間に、そうだなぁ…1週間に一度の計算で、3回はオレとデートしてくれないかな」
両手を合わせて拝むようなポーズでこちらを伺う伊東さんがまるで子どもっぽく見えて、私は思わずクスッと笑ってしまう。
「付き合ってもらえるのか、フラれちゃうのか。宝ちゃんの返事は少なくとも3回目のデートが終わってからにしてほしい。そこまでオレに頑張るチャンスをくれたら嬉しいんだけど」
― なんというか、伊東さんって憎めないな。
押しもゴリゴリに強いけれど、人懐っこさも強い。伊東さんがパリのレストランのオーナーに可愛がられて今に至るという話に今更ながら妙に納得した。そして気がついたら伊東さんの提案通り、最低3回のデートをすること、そして返事はそのあとで、という約束を交わしていたのだった。
◆
デートの翌日。土曜日12:00過ぎの西麻布。
「大人が恋愛を始めるにあたっての覚悟というか…必要なものってなんでしょうか?」
私の質問に愛さんのテンションは一気に上がり、なになになになに!?もしかして急展開!?と前のめりに、矢継ぎ早になった。
急展開といえば急展開(私の恋愛レベルにおいては)なんですが…と私は昨日の伊東さんとのやりとりを説明した。昨日の報告を聞きたいと愛さんにランチに誘われたここは、西麻布の裏路地にあり、創業30年を超える洋食レストランだ。
「今日はどうしてもこのオムライスを食べたくて♡」
と、愛さんおススメの、ホワイトソースのオムライスを私も頼んだ。焦げ1つなく艶々に焼かれた黄身の上に、濃厚ミルクのホワイトソース。その上にはパプリカパウダーがかかっていて色味のバランスもかわいらしい。
崩すのがもったいなくなるほど整った美しい楕円の山に、思い切ってスプーンを入れる。口に運ぶと、うわっおいしい!!という言葉しか思いつかずに、伊東さんならなんと表現するだろうと聞いてみたくなった。
「あービール飲みたかったなぁ」
このあと仕事があるから飲めないのと嘆きつつ、愛さんは私の話を一通り聞いてくれた。伊東さんが結婚という単語を出したことには驚いていたものの、でもまあ運命を感じたらすぐ動く人だからねと納得顔で頷いてもいた。
「ほら伊東さんってさ、運命の一皿に出合ってそのレストランで働き始めたでしょ?それで今の大成功に至るわけだから、自分の直感に素直に動けば人生がうまくいくタイプというか、直感に自信があるんだよね。
宝ちゃんが何で私なの?と思うのも理解できるんだけど、伊東さんにそれを聞いても、宝ちゃんに運命を感じてビビビっときたっていう説明しかできないんじゃないかな」
直感に自信があるなんて私には未知の世界だと思っていると、愛さんが、宝ちゃんのさっきの質問なんだけどさ、と話を戻してくれた。
「大人が恋愛を始めるための覚悟は?ってやつ。それを聞いてくるってことは、伊東さんとの関係を始めることに一応前向きってことだよね?」
「前向きっていうのはなんだかおこがましいんですけど、伊東さんが良い方なのは理解していますし、お話していても楽しいです。だから好きになれたら…というか恋愛ができたらいいなとは思うんですけど」
「…けど?何か不安なことでもあるのかな」
優しく次の言葉を促してくれた愛さんに甘えて、私は伊東さんとのデートにより蘇ったトラウマ…そして新たに生まれた不安を素直に話してみようと思った。
しかし、この連載も今後隔週でしか読めなくなってしまうのか......素晴らしいライターさんなので残念。
以前は宝ちゃんと大輝でハッピーエンドかと思ったけど、今は伊東さんと何とかうまく行って欲しい。大輝の気持ちが揺らぎ始めているけれど。
伊東さんでトラウマを上書きしてほしい気持ち半分、大輝くんと友情以上のものを感じてほしい気持ち半分。来週読めないのが残念っ。
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