東京3C男子 Vol.4

「仕事がデキる女は、彼女にしたくない」26歳男の本音に、女は思わず…

◆前回のあらすじ

食品メーカーの営業である唯子は、同じ会社のデザイン室に勤める瑛太と恋人同士。しかし瑛太は最近、仕事でなかなか結果が出せていない様子。
そんななか、瑛太が応募した社内コンペの結果が出たが…。

▶前回:出会って1ヶ月で交際に発展。社内で憧れていた彼を落とした25歳女のテクニック


クリエイターの男/唯子(25歳)の場合【後編】


正午きっかりに届いた社内メール。

『【重要】新製品のロゴコンペの審査結果のお知らせ』と書いてあるそのメールを開くと同時にデスクの内線電話が鳴り、唯子は思わずうわずった声を上げた。

「私の案が採用…!?」

かかってきた内線電話は、審査を担当する商品企画室からだ。唯子の応募した案が満場一致で採用された、とのことだった。

受話器を持った手が、震える。

― まさか、軽い気持ちで出したのに。

応募したことは瑛太にも言っていなかった。募集要項には『デザイン部に限らずすべての部署の社員も応募可能』と記載があったのを見て、ほんの出来心で応募したのだ。

片手間で、しかも1点のみ作成しただけ。販促ツールのデザインを考えるついでに思い浮かんだ案を軽い気持ちで出したまでで…。

「メール見たよ、福浦くん。すごいじゃないか」

受話器を置くと、すぐに営業部長がやってきて、その快挙をたたえてくれた。

「ありがとうございます。実は私、美術を専攻していた時期があって、独学でもデザインを少々勉強していたんです」

「おおー、元アーティストだったのか。福浦くんの作る販促ツールはセンスもいい上に、考え方も独創的だと前から思ってたんだ」

調子いい部長の軽口だとわかっていても、褒め言葉は嬉しい。唯子は自分の中にあるクリエイターの残り火に気づいた。

「これからお祝いに『美濃金』に鰻でも行くか?あそこの鰻は絶品だ。もちろんご馳走させてもらうよ」

「…申し訳ありません。またの機会にぜひよろしくお願いします」

唯子は、せっかくの部長の誘いを断ってしまった。

「おおそうか…残念だ」

隣でおこぼれにあずかろうとしていた同僚たちはため息をつく。後ろ髪をひかれたが、仕方ない。唯子には、このことを真っ先に伝えなければならない人がいるのだ。

唯子はデザイン室のある上層階フロアへまっすぐ向かった。

この記事へのコメント

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No Name
唯子は画家になりたくて大学の美術学科に入ったけれど周囲のレベルの高さに心折れて学科を転籍までして諦めた。そんなやつが片手間で軽い気持ちで出した案がすんなり通るコンペ。現実味ゼロ。 瑛太に内緒で出してた事謝るのかと思えば、「直接報告して瑛太に誉めてもらおう」って。人の気持ち全然考えない唯子に吐き気がした。
2024/07/02 05:4443
No Name
仕事でスランプに陥っている時、自分の彼女がコンペに通り社内で栄誉をたたえられてたら、そりゃもう落ち込むとは思う。でも、SNSや掲示板に誹謗中傷の書き込みしたり盗作の告白までするかなぁ。付き合ってる相手にそこまで悔しさをぶつけるほど病んでた?
2024/07/02 05:4230返信1件
No Name
うーん。いかにもな作り話って感じ。
がっかり。
2024/07/02 05:1826返信4件
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