三人の男たち~夫婦の問題~ Vol.12

医者キラーのナースに落ちた男。残業後、タクシーで帰宅しようとしたら乗り場に彼女がいて…

「だから、別に東京じゃなくたって私の仕事は変わらないの。むしろ中国に行けるなんて、中国の流行や語学も学べるから、いいことづくしじゃない」

「え、中国に行くの嫌じゃないの…?」

カリンは元モデル。都会もファッションも好きで、行ったこともない中国の田舎に行くことなんて、絶対に嫌だと思っていた。


ただでさえセックスレスで、夫婦仲もうまくいっていない状態で付いてきてくれるはずなどない、とミナトは思い込んでいたのだ。

「それに、離婚したら娘にも簡単に会えなくなるかもしれないのよ?そんなの耐えられるの?」

「でも今も会えてないし、親のケンカする姿を見せるくらいならいっそ、別れた方がいいと思って」

「もーそれがバカ!大バカ!私たちの気持ちを確認もしないで勝手に決めないで。私はミナトの転職に賛成だし、中国もついて行く!」

カリンの力強い言葉に、気を張っていたミナトは全身の力が抜けたように感じた。

「でも、給料も下がるし環境も悪くなるけど…。それにレスのことだって、どうしたら改善できるのかもわからないし」

「給料は前にも言ったけど、私も稼いでるから大丈夫。環境だって住めば都っていうでしょ?なんとかなるよ。レスのことは、私もわからない。だからこそ、一緒にカウンセリングを受けたりしてみよう。だから…」

カリンはそこまで言うと、少し声を詰まらせた。

「1人で勝手に悩んで決めないで。離婚とか言わないで。私だってあの子だって、あなたのことが大好きなんだから…」

そう言うと、今まで我慢していたのか、カリンの目から涙が溢れ出した。

これまでミナトは仕事で追い込まれ、妻からのプレッシャーに追い詰められ、自分1人だけが苦しんでいるように感じていた。

それに、自分が情けなく感じて、こんな自分といることでカリンや娘に申し訳ない気持ちもあった。

その考え自体が、間違いだとも気がつかずに。

「ごめんカリン、本当にごめん…。俺は多分、不安だったんだ。仕事も思うようにいかなくて、せっかく結婚できたカリンにも、いつか呆れられるんじゃないかって…半分いじけてた。

嫌われるくらいなら、自分から別れようってそう思ってた。ごめん…」

ミナトはカリンを後ろから強く抱きしめると、静かに涙を流した。


「嫌われるとか、ほんっとそれがバカすぎる。何?私がミナトと結婚したのって、お金のためだと思ってたの?失礼すぎ!舐めないでくれる?」

「うん、思ってた。俺の顔なんて、万札にしか見えてないんだろうって」

「だったら、アラブの石油王でも捕まえてるわ」

2人は泣き笑いながら冗談を言うと、カリンがミナトの方を向き直し、もう一度強く抱き合った。

こうやって肌の温かみを1年以上感じていなかった2人は、冷たく固まっていた心の奥が、じんわりと溶けていくのを感じた。

この記事へのコメント

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No Name
バカバカバカバカばっかり
バッカじゃないの
2024/06/28 05:1131
No Name
カリンの反応が不自然過ぎだからか、安っぽい展開になっていてガッカリ。 中国に住むのは都市部でも抵抗ある人の方が多いと思う。田舎なら余計に。個人の価値観によるけれど大気汚染/公害や食品の安全性とか反日とか、治安やマナー問題等々、子育て環境に優れてるとも思えない。愛し合っている夫婦でも悩んだ挙句単身赴任してもらうケースもある中で、いい事尽くし?住めば都ですかい。
2024/06/28 05:4126
No Name
うわー、色々と後出ししてきて寒々しい。カリンもミナトもここまでくるとキモい。
陸は本当に気の毒としか言いようないね。早く杏一家と縁を切って出直して欲しい。医師キラーの看護師最低! ま、バチは当たるしろくな死に方しないだろう。
2024/06/28 05:2725
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