報われない男 Vol.7

「22時までに弘前のさくらまつりへ行きたい」青森への出張中に上司を先に帰らせ、意中の彼女と…

前回:「彼女と私、どっちも好きなの?」妻の質問に否定しない夫を置き去りにし、家を飛び出て…



「私たち、友達になりません?仲良くなって助け合いましょ」

そう言った長坂美里に大輝は眉をひそめた。話がしたいと訪ねてきた美里を受け入れることにした大輝の意図は、美里の狙いを確かめることで、少しでも京子を守れたらということにあった。

京子を支えてタクシーに乗せたあの日に、美里とは目が合っている。あの一瞬でお互いを認識したとはいえ、なぜ自分を探し出せたのか、と聞いた大輝に、“友坂大輝”は有名人ですからと笑った。そして、大輝さんって呼ばせてもらいますねと言い、大輝の許可を待たずに続けた。

「この大学で女子を捕まえたらすぐに分かりますよ。大輝さんが大学に来るスケジュールを正確に把握してる子、1人や2人じゃなかったですし。推しはみんなのものとか言って、大輝さんのスケジュールを共有し合ってるみたいですよ」

私も大輝さんの推し仲間としてカウントされたみたいです、と美里が、大輝を促すように自分の視線を左右に動かした。美里の視線の示す先には、3組程、2人組だったり、3人組だったりする女の子たちがいて、美里と大輝をチラチラと見ている。

話の邪魔しませんよという意志表示でもしているつもりなのか、彼女たちは近すぎることも遠すぎることもない絶妙な距離に散らばっている。

大輝も、決まった女子たちが自分のまわりに度々現れることは認識しているし、全て断るものの、ランチを一緒にとか、飲みに行きませんか、と誘われることも多い。街でのナンパを含めて、知らない女子に誘われることは大輝にとっては至極当然、日常のことなので、特に気にしていなかったが。

公表されている京子の講義スケジュールはともかく、教授の雑用係として呼ばれる不定期の日程まで把握され、共有されているとは思わなかった。小さく溜息をついた大輝を美里は、イケメンも超がつくと色々大変なんですね、と笑って、話を戻していいですかと続けた。

「私はね…出会ったタイミングが遅かったっていうだけで、あきらめるのはイヤ。崇さんへの思いを…世間が決めた、不倫とかいうチープな枠にカテゴライズされるのは耐えられないんです。大輝さんもそうでしょう?」

「……オレはそうじゃないし、カテゴライズとかどうでもいい」

あっさりと否定した大輝に、美里はわかりやすく、えっ?という顔になった。同意してもらえると信じて疑っていなかったのだろうその表情を、大輝は可笑しく思いながら穏やかに続けた。

「美里ちゃん…だっけ?オレも人のことは言えないとはいえ、あなたは完全に不倫で愛人でしょ。しかも本妻を傷つけるために本人の前に登場したんだから、完全な悪役だよ。せめてその立場は自覚しといたほうがいいと思う」

この記事へのコメント

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No Name
大輝の性格の良さが伝わってきた。
2024/03/30 06:2038
No Name
長坂、調子に乗り過ぎてて腹立たしい。 最後はしっかりとお灸を据えられる展開であって欲しいね。
2024/03/30 06:1933返信2件
No Name
大輝に恋を教わったら、キョウコは無敵の脚本家になれそう。1人の女性・京子としても成長するだろうね。それを崇とやれていないのは情けないけど。
2024/03/30 05:5027
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