前回:朝6時に目が覚めると、自分の家ではないことに慌てた34歳女性。物音がする方向に行くと…
◆
「大ちゃん…オレ エロいお姉さんとの下ネタが楽しみで来たんだけど」
「勇太…京子さんをエロいお姉さんとか言うな」
「可愛すぎて手を出せなかったとか…大ちゃんがキモイからでしょ」
大輝は親友である勇太を、京子が帰った後に自分の家に呼び出した。そして勇太は今、かれこれもう一時間以上も、事の顛末と彼女への想いを大輝から熱弁されている。
「10歳年上のキレイなお姉さんって確かにそそるけどさ…オレ、今朝までバイト入ってたの知ってるだろ…」
1回寝かせてとソファに横になり目を閉じても、大輝は構わず話し続ける。人の好い勇太は寝たふりしてごまかすこともできず、あーもう!と頭を掻いて起き上がった。
「オレが初めて京子さんって呼んだ時、フリーズして目をぱちぱちさせてかわいかったなぁ。いつもはクールでビシッとした女性が崩れた感じのあの何とも言えないかわいさ。勇太、わかるだろ?あーやっぱあの時、抱きしめちゃえばよかった」
その時の、目をぱちぱち、とやらを思い浮かべているのだろう。京子の代わりとばかりにソファのクッションをぎゅっと抱きしめた大輝の顔がだらしなくゆるむ…ゆるんだはずなのにそのだらしない顔さえイケメンで勇太はムカついてきた。
勝手知ったる親友の家。これは長期戦になると判断した勇太はソファから立ち上がり、冷蔵庫をあさる。プリンとシュークリームを見つけて、大輝は甘いものを食べないのにと不思議に思いながら戻った。
すると大輝が、あ…それ京子さんのために朝コンビニで買ってきたやつ。テンション上がりすぎて出しそびれちゃったな…とまたうっとりと思考を飛ばしたものだから、勇太はさらに萎え、乱暴にシュークリームの袋を開けてその大きな口にほうりこんだ。
むしゃむしゃと飲み込みながら、このシュークリームみたいに親友の危険な恋も溶けて消えてしまえばいいのにと思う。
「どんなにかわいくても人妻じゃん。騙されて痛い目見る前にやめとけ、に100万点」
「騙されてもいいと思う程好きだからやめられない、に200万点」
「…大ちゃん。オレふざけてるけど本気で止めてるよ」
「わかってるよ。でも2年間も振り向いてもらえなかったんだからさ。オレ今、めちゃくちゃ幸せなんだ。今日だけでも許してよ」
こうなった大輝はもう止まらないし加速する。それを知っている勇太は、この恋愛バカを守るためにはどうすればいいのかとため息をついた。
相手にとことん尽くしてしまう極度の恋愛体質。でもいつも報われない。それが大輝だった。イケメン・金持ち・優しい…その他もろもろ。世の好条件の全てを持ち合わせているはずな大輝の、ただ恋だけが上手くいかないということを、勇太は常々不憫に思っていた。
......
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この記事へのコメント
今の20代も、【◯◯に100万点】とか使うんだね。子どもの頃に見たクイズダービー以来だよ、そんな表現。あの頃は、はらたいらさんが何者なのか分からなかった。正体が分かったのは、彼が亡くなった時。
しかし、長坂美里の話は矛盾しないけど嘘くさい。京子さんと大輝の関係と大差ないのかも知れない。