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  • 麻布十番の食事会で、憧れの彼と再会。デートに誘われ浮かれる27歳女が一転、自らドタキャンしたワケ

    仕事にも恋愛にも振り回されることなく、365日24時間、イイ女でいたい。

    東京で賢く生きる女性は、誰もがそんな思いを抱いている。

    しかし、ITベンチャーに勤める27歳の茜は毎日を楽しめずに、モヤモヤを抱えていた。

    どうしても手に入れたいハイスペックな男性を目の前にしても、“あること”が気にかかり、恋活にも前向きに取り組めないでいるのだ。

    ― 自分だけ人生が停滞しているみたい……。

    そんな悩みのどん底にいる彼女に襲いかかった、さらなる試練とは?


    「彼を絶対に手に入れたい」と燃え上がる27歳営業女子・茜


    「ウソでしょ!!??!?」

    麻布十番にある、こぢんまりとした創作イタリアン。

    食事会に参加していた茜は、姿勢を正し、とっさに髪を整えた。

    ― え、陸人くん……だよね?

    遅れて登場したスラリと背の高い男性に、どう考えても見覚えがある。

    「遅れてすみません。陸人といいます。コンサルの経営をしています」

    今日の食事会は、男女4対4。陸人の姿に、他の女性陣が明らかに色めき立ったのが茜にはわかった。

    ― やっぱり、あの陸人くんだ…。一段とかっこよくなってる。しかも今は経営者?

    懐かしい記憶がよみがえる。それは、茜が高校1年生のときのことだ。通っていた中高一貫の女子校の文化祭に来ていたのが、陸人だった。

    「隣の男子校に通っている」という彼は、当時から端正なルックスの持ち主。文化祭が終わってからも、その存在が学校中でしばらく話題になった。

    茜はそんな陸人に声をかけられ、メールのやりとりをしていた。

    でも、恋愛経験が少ない高校生の茜は、照れくさくて当たり障りのない返事ばかりを送信。いつの間にか連絡は途絶えた。

    ― 私、しばらく落ち込んだんだよね。…陸人くんはもう、覚えてないか。

    茜は冷静を装い「初めまして、陸人さん」と挨拶をした。



    食事会が終わり、タクシーを探そうと、麻布通りを抜けて一の橋交差点にみんなで向かう途中のことだ。

    「茜さん」と背後から呼び止められ、全身がビクッと硬直する。陸人の声だ。

    「よかったら、次の週末にでもまた会えないですか?」

    「…え?も、もちろんです」

    「じゃあ土曜にしましょう」と、LINEを教えてくれる陸人。スマホを動かす手元には、パティック フィリップのカラトラバがちらりと見え隠れしていた。

    ― ブレザーの制服もよく似合っていたけれど、細身のスーツはもっと似合う。しかもこんなオシャレな時計もしているなんて、すっかり大人の男性だなあ。

    陸人を見つめながら、茜が「絶対にこの人を手に入れたい」と思うのは必然だった。

    しかし、約束の前日。“ある理由”で茜は、デートをキャンセルすることになる…。

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