
お手頃、本格、美味! 行きつけにしたいカジュアルレストラン
世の飲食店がこぞって価格競争に走るずっと前から、師匠の落合務氏とともに内容充実のイタリア料理を低価格のコースで提供し、イタリア食文化の普及に尽力してきた加藤政行シェフ。
その加藤氏が『ラ・ベットラ・ペル トゥッティ』の厨房を離れ、新たな店で腕を振るうと聞けば、すぐにでも駆けつけたくなるファンは多いはず。新天地は、南青山三丁目交差点からすぐの場所に建つビルの2階。ハイスツールが並ぶカウンターが中心で、夜のメニューは基本、アラカルト。取り分けも、1皿と1杯のおひとり様もウェルカムという使い勝手の良さだ。
だが、野菜が主役ともいえる“加藤流”イタリアンは健在。バーニャカウダで供されるパプリカやヒメニンジン、パスタに使われる空豆やズッキーニなどの野菜のほとんどは、25年前から有機栽培に取り組む埼玉・所沢の「陽子ファーム」のものを使用。ほか、チーマ・ディ・ラーパ、チコリなどイタリア野菜もふんだんに用いる。
手を加え過ぎず、蒸す、焼くなど絶妙な加減で火入れされた野菜は彩りもひと際鮮やか。立ち上る香りや甘さやほろ苦さといった味わいの力強さも格別なのだ。そんな料理に寄り添うようなワインを計20種、加藤氏自ら厳選しているというから、また楽しい。
きれいは1日にして成らず、ゆえに道遠し……と諦めがちな諸氏にこそ、まずはこの店の美しい料理を味わってみてほしい。