ハラスメント探偵~通報編~ Vol.10

“頭をポンポン”しながら「頑張れよ」という上司に鳥肌!ハラスメント相談窓口に駆け込むも…

知られざるハラスメント調査の現実


調査が難航する理由は幾つかあった。

まず、被害を訴えている飯田の問題があった。向井が事情を聞く度に彼女は感情的になり、泣き出すのだ。


「毎日のように私に近寄ってきて、体を触られて不快な思いをさせられて、その気持ちがあなたにわかります?あの人は絶対に私のことを一般職の女だからと下に見ていて、何してもいいと思ってるんですよ!」

そして行為者である今西に対してクビか、さもなければ違う支店への異動を求め、要望が通らないようであればSNSでリークすると向井に迫るのだった。

そうした状況をなだめるのも向井の仕事だった。

もうひとつの問題は、行為者として訴えられている今西の方にあった。

彼は、自身にかけられた疑いに対してあざ笑うようにこう言うのだった。

「彼女に話しかけていたのは事実ですが、体に触ったという内容は彼女が勘違いしているんでしょう。立場のある僕が、そんなことをするような人間に見えますか?」

調査では当事者だけでなく、周囲の同僚にも事実確認をする必要があるが、多くは面倒に巻き込まれたくないので曖昧にしか対応せず、職場の支店長でさえも協力的とは言えない。

なかなか真相に辿り着けず、時間ばかりが過ぎていく。当然ながら向井は本来の業務もできず、残業が続いた。

そして、ようやく2人のやり取りを目撃したという同僚の証言が取れ、今西の行為をセクハラと認定できたと安堵したのもつかの間、今度は別の支店で起こったハラスメント問題だ。

「若い行員から、同僚がいる面前で上司にバカにされたと通報がありまして…」

「送別会の席で支店長が『俺は、女性を管理職にはしない』とポロッと言ってしまったようで…。どうしたらいいでしょうか?」

「またか…」向井は思わずつぶやいた。

ただ、いつもならそれで気持ちを切り替えられるはずだった。「これが私の仕事なんだから」彼女は自分にそう言い聞かせてきたのだ。しかし、限界はあった。

激しくデスクに両手を叩きつける音がオフィスに響いたかと思うと、次の瞬間、向井は同僚や上司が周囲にいるにもかかわらず絶叫していた。


「研修でくどいほど注意しているのに、なんでハラスメントはなくならないのよ!」

なぜ、職場のハラスメントはなくならないのか。最終回の解決編では、その謎に迫る――。

▶解決編はコチラから!
あなたは当てはまってない!?気をつけていてもハラスメントする人の3つの傾向

結末が知りたい方はこちらから>>

監修:株式会社インプレッション・ラーニング
代表取締役 藤山 晴久

全国の上場企業の役員から新入社員を対象とした企業内研修や講演会のプランニング、講師を務める。「ハラスメントに振り回されない部下指導法」 「苦手なあの人をクリアする方法」などテーマは多岐にわたる。

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