映画の成功でワイン造り、ワイン造りの成功で映画制作
新谷:えっ、そうなんですか?
柳:ほら、コッポラってルーツがイタリアでしょ。だから、彼のDNAにはもともとワインに対する情熱が組み込まれていて、『ゴッドファーザー PARTⅡ』で儲けたお金で1975年にナパ・ヴァレーのブドウ畑を購入。
当初はブドウを近隣のワイナリーに売り、ワインまで造る気はなかったそうだけど、『地獄の黙示録』に想定以上のお金がかかったので、ワインを造って利益を得なきゃならなくなった。
当時のニーバム・コッポラ、現イングルヌックの「ルビコン」は、「オーパス・ワン」と肩を並べるナパの偉大な赤ワインだよ。
嵩倉:なんと、映画だけでなくワインも本気なんですね。
柳:ソノマにあるフランシス・フォード・コッポラ・ワイナリーは、まるでコッポラ作品のテーマパークのごときしつらえ。
1988年の映画『タッカー』で登場した幻の名車タッカー’48セダンが展示されているし、この『ドラキュラ』に使用された衣装も見ることができる。
新谷さんが行かれたら、もう狂喜乱舞かな?クラリン向けにはレストランとスイミングプールあり。
嵩倉:いぇ〜い。
柳:じつはソノマのワイナリーは2年前、大手ワイン企業に売却しちゃったのだけど、名前も内容もそのまんま。なんでも新作の制作費捻出のためとか……。
新谷:あっ、それはきっとコッポラ監督最後の大作と噂されている『メガロポリス』のためでは?
ある時は映画がワイナリーを支え、またある時にはワイナリーが映画を支えてきた。そこにコッポラ監督の人生観を見た感じがします。
嵩倉:で、柳さん、今回おすすめのワインは?
柳:フランシス・フォード・コッポラ・ワイナリーの「ディレクターズ・カット ドライ・クリーク・ヴァレー ジンファンデル」。
ひとつには、コッポラ監督の大好きなブドウ品種がカリフォルニアを代表するジンファンデルということ。それから濃厚で甘やかな果実味ながらも、後口の鉄っぽい風味が、ちょっと血の味を連想させるから。
「Francis Ford Coppola Winery Director's Cut Dry Creek Valley Zinfandel 2019(フランシス・フォード・コッポラ・ワイナリー ディレクターズ・カット ドライ・クリーク・ヴァレー ジンファンデル 2019)」
マリアージュをお届けするのはこの3人!
幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるジャーナリスト。苦手なホラー映画だと身構えた今月だが、図らずもホロリとしかけるほど涙もろい。
映画を中心に、書いたり取材したり喋ったり。柳さんに教えてもらったワインを参考にワインショップに行く機会が増えた。いつかコッポラのワイナリーにも行きたい!
本連載の担当になって5年目に。ワインの知識は少しずつでも積みあがっていると信じ、柳氏にしがみつく日々。ゲイリー・オールドマンのような影のある男が好き♡
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