名品には数々の効力がある。
身に着けることで日々のモチベーションアップにつながったり、自分に自信をくれたり――。
まさに、大人たちのお守り的存在だ。
本連載では人々から愛され、流行に左右されることない一生モノの“ファッション名品”にフォーカス。
今回登場するのは、テレビ局勤務を経て現在経営者の坂田航樹さん。彼が紹介してくれるアイテムとは?
1994年生まれ、大阪府出身の29歳。
大阪大学大学院を卒業後、TBSテレビに入社。カメラマンとして番組制作に携わり、システム開発、新規事業立ち上げにも関与。昨年退社し独立。現在はフィットネス事業をしながらフリーのカメラマン、モデルとしても活動中。
よく行くエリアは恵比寿、六本木。趣味は筋トレ、カメラ、バスケットボール。
5年後もその先も、ずっと使える時計を探して
今回、坂田さんが名品アイテムとして紹介してくれるのは、ブライトリングの腕時計「クロノマット 44」。
1984年にイタリア空軍「フレッチェ・トリコローリ」との共同開発により発売され、約40年の時を経た今では、同ブランドのハイスペックモデルとしても名高いシリーズだ。
坂田さんとこの時計との出合いは、約5年前。TBS入社1年目の夏まで遡る。
「初めてボーナスをもらった時に、良い時計を買いたいなと思ったんです。でも元々は、15万円ほどの別の時計を検討していて。そうしたら中途入社の年上同期から『5年後もその時計使うの?』と質問されて…。
その時ふと、5年後はもっと良い時計に買い替えているだろうなあと感じました」
当時は高級時計を購入するつもりはさらさらなかったが、時計好きの30代同期との会話で、その考えががらりと変わったという。
「その年上同期から、『これ読んでみなよ』と、時計専門誌とかももらって。僕は元々、洋服や靴も長く使うタイプだったので、だったらちゃんとした時計を買うか、と気持ちを改めました」
決意のあと向かった先は、表参道の時計店だった。
店舗で実物を見た坂田さんは、「今まで見てきたものと圧倒的にきらめきが違う!」と感じたそうだ。
「文字盤には、スレートという粘板岩が使われています。日本家屋の瓦の素材と一緒で、角度を変えると、グレー、青、黒と少しずつ色が変化するんです。限定生産300個というプレミア感にも惹かれました」
たしかに文字盤をよく見ると、色は漆黒ではなく、ほどよいアンニュイな表情を見せる。そのエレガントな輝きに思わずうっとりしてしまうほどだ。
ちなみに坂田さんは2020年に「Mr.JAPAN」、いわゆる「MISS JAPAN」男性版のコンテストで優勝したことがあるほど、筋肉質な体形をしている。そんながっちりした太い腕にも見劣りしない腕時計のボリュームが、彼にマッチしている。
着用シーンは……初対面の人と会うときは必ず
購入したての時は、会食やパーティーでの着用がメインだった。
「社会人1年目の時は、100万円が腕に付いていると思うとなんだか怖くて。左手周辺だけパーソナルスペースが広かった(笑)」と語るが、経営者となった今では、初見の人と会うときは必ず着用するほどの溺愛ぶりだ。
「独立してから、時計好きの経営者の方とお会いすることが多くて。そういう方たちはすぐ気づいて、『その時計珍しいね』と声をかけてくれるんです。それがいいアイスブレイクになります」
ロレックスと似たレンジでありながら少しニッチなブランド、という点に、成功者たちが興味を持つのだとか。
ファッションは自信を持たせてくれるもの
大阪大学大学院卒業後TBS入社、と一見すると輝かしい経歴を持つ坂田さんも、会社員時代はうつ状態になり体調を崩すこともあった。そのときに、筋トレを始めとした外見改善の重要さに気づいた。
「不安な未来へ進む恐怖に襲われたときから、勉強して自分のスキルを上げるという根本的なところもそうなのですが、ボディーメイク、ファッション、美容と外見改善に時間とお金を投資するようになりました。
それは決して他人と比べたり承認欲求があったりしたからではありません。昨日の自分よりも少しでも格好いい自分でいる努力をすることで、新しいチャレンジにもビビらなくなり、実際に意思決定もスムーズになりました」
そう語る坂田さんの今の夢は、フィットネス事業を通して、かつての自分のように悩む人たちの背中を押すことだ。
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取材中、「社会人になって一度体調を崩したことがある」と話してくれた坂田さん。
でもそれを乗り越えた今、自分磨きに励むことで昔より主体性を持てるようになったという。自分自身のつらかった経験をも糧にして、綺麗になることの楽しさを多くの人に伝えていきたいという姿は美しい。
「この時計を着けるときはいつも気が引き締まります」とはにかむ彼のこれまでの人生、そしてこれから広がる未来の時間を、この時計が見守り続けることだろう。
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写真/品田健人