2022.12.25
今の時期は、クリスマスやホームパーティーなど、ワインを飲むイベントが多いもの。
家族とのご馳走ディナーや、大切な相手への贈り物に、どんなワインを買えばいいのか悩むことはないだろうか?
この1年、「東京カレンダーWEB」で公開したワイン記事の中から、「自宅用」 、「ホムパの手土産用」 、「プレゼント用」をジャンル別にご紹介!
どれもワインジャーナリスト柳 忠之氏が厳選した、間違いのない逸品ばかり。
残りわずかな2022年、とっておきの1本で締めくくろう。
1.ソーセージと合わせてゆる飲み!軽やかな口当たりの、チリのパイス
「Bouchon Pais Salvaje Maule Valley(ブション パイス・サルヴァヘ マウレ・ヴァレー)」
1970年代、チリのマウレ・ヴァレーに創立したワイナリー。
「サルヴァヘ」とはワイルド、野生という意味。自生するパイスは他の木の枝に巻きついて実をならすので、収穫には5メートルのハシゴが必要。野イチゴのアロマが華やかに香り、軽やかな味わい。
2,970円/WINE TO STYLE TEL:03-5413-8831
◆
チリで最もメジャーで世界に通用するブドウ品種と言えば、カベルネ・ソーヴィニヨンだが、いろんな国で造られていて競合が激しい。
そこで、ホームパーティーで持ち寄るなら“パイス”を選んではどうだろう。
パイスは、15世紀末にキリスト教の宣教師たちによって持ち込まれたブドウ品種。カリフォルニアのミッション、アルゼンチンでクリオージャと呼ばれる品種だ。
チリワインが世界的に有名になる90年代まで、チリのブドウ畑を席巻していたのはパイスだったほど、その歴史は長い。
もともと大量生産向きで、あか抜けない性質もあるので、カベルネやシャルドネに取って代わられたが、まだこの品種が残っている産地がある。
この「パイス・サルヴァヘ」は自生するパイスから造られた赤ワイン。赤い果実やサクランボ、野生のイチゴや花の香りが感じられる、今どきのゆるっとした味わいだ。
溢れるフレッシュ感とバランスの良さから、バーベキューなどにもってこい。寒いこの時期は、様々な種類のソーセージやと合わせて自宅で楽しんでみては?
2.老舗ワイナリーが手掛ける、キリっと爽やかなドイツの辛口リースリング
『シュタッフェルター・ホフ』は、862年に創業されたドイツ最古のワイナリーのひとつ。
創立1,150年を祝し、オーガニック栽培のブドウから造られるこちらは、中世の騎士像やひげ文字のない、シンプルかつモダンなラベルも特徴のひとつ。しかも手軽なスクリューキャップがうれしい。
3,300円/エノテカ TEL:0120-81-3634
◆
90年代の半ばまで、フランスの次に輸入量が多かったのはドイツワインだ。この時代は日本でも甘口のドイツワインが好んで飲まれていたので、“ドイツワインと言えば甘口”のイメージを持つ人は多いだろう。
しかし、その後の赤ワインブームで、白の比率が高いドイツワインは退潮の一途をひた走る。そこで、近年の温暖化でブドウの熟度が上がり、ドイツでも辛口ワインが美味しくできるようになったことから、“辛口の白”で巻き返し。
従来の、やたら名前が長いラベル表記も、今ではもっとシンプルなネーミングのワインも増えてきて、デザインもモダンでスタイリッシュなものが見られるようになってきた。
お洒落なデザインのボトルは、置いているだけでも気分が高揚するので、自宅で楽しむのにぴったりだ。
味わいは、フレッシュな酸味のキリッとしたワイン。フローラルで爽やかな柑橘香を伴い、スッキリした辛口なので、ゴクゴク飲めるのが特徴。
3.じっくり味わうならこの1本。コクのある料理と合わせる、フランスのガメイ
「Château des Jacques Moulin à Vent 2019(シャトー・デ・ジャック ムーラン・ア・ヴァン 2019)」
造り手は、ボーヌのルイ・ジャド社が1996年に傘下に収めたボージョレのシャトー。
前オーナーの時代から、フルーティで早飲みのワインを造るために使われるカーボニック・マセレーションをせず、ブルゴーニュの伝統的製法を貫き、ものによっては50年以上の熟成にも耐える。
4,070円/日本リカー TEL:03-5643-9770
◆
近年の円安に輸送費の高騰で、例年と比べてはるかに高く販売された、今年のボージョレ・ヌーヴォー。
ヌーヴォーは“新酒”という意味で、ボージョレがすべてボージョレ・ヌーヴォーというわけではない。そこで今年は、別のボージョレを試してみるのもアリ。
ボージョレのブドウ品種はガメイ。ブルゴーニュの南にあるボージョレ地区は、土壌が温かな花崗岩質でガメイの栽培にはぴったりだ。
特に「ムーラン・ア・ヴァン」や「モルゴン」など、クリュ・ボージョレと呼ばれる上級品の中には、素晴らしいお宝ワインがざっくざく。最近は高くなるばかりのピノ・ノワールに見向きもせず、美味しいガメイをひたすら探し求め、自らを「ガメラー」と称する熱狂的ファンもいるほど。
おすすめのボージョレワインはシャトー・デ・ジャックの「ムーラン・ア・ヴァン」。熟成のポテンシャルも高く、早飲みが主流の一般的なボージョレとはまったく別物と言ってよい。
こちらは、キノコのリゾット、ラムチョップなど、豊かなコクのある味わいの料理に合わせて、じっくり味わうのが正解。
バランスの良いワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑でエレガントな風味の広がるマリアージュを楽しむことができる。
4.鮨と相性抜群!食欲をそそるほろ苦さの、ジョージア発オレンジワイン
ジョージアのオレンジワイン「QVEVRI WINE CELLAR KISI QVEVRI(クヴェヴリ ワイン セラー キシィ クヴェヴリ)」
2015年設立と新興のワイナリーながら、初ヴィンテージがジョージアワイン最優秀賞を獲得したクヴェヴリ ワイン セラー。
キシィは絶滅の危機に瀕していた品種で、アプリコットやベルガモットの香り。ボディに厚みがあり、アフターのほろ苦さが食欲をそそる。
4,895円/モトックス TEL:0120-344-101
◆
最近、ワインバーでしばしば見かけるオレンジワイン。白ブドウを潰して、果汁と果皮も一緒に漬け込みながら発酵させてつくる。
赤ワインをつくる黒ブドウは、果皮にアントシアニンという色素が含まれているので赤く染まるが、白ブドウにはそれがないので、オレンジっぽい色になるというわけだ。
オレンジワインは、最初からオレンジを意識して造られたわけではなく、大昔は黒ブドウも白ブドウも区別なく、摘んだブドウをそのまま発酵容器にぶち込んでただけ。現代のオレンジワインは原点回帰、いわばリバイバルだ。
オレンジワインで有名な国が、ジョージア。ワイン造り8000年の歴史を誇り、はオレンジではなくアンバー(琥珀色)と呼ばれている。
ここではクヴェヴリと呼ばれる素焼きの甕に、白ブドウを果皮や種子、場合によっては軸ごと詰めて発酵させる伝統的醸造法がいまだに行われる。このクヴェヴリによるジョージアの伝統的ワイン造りは、ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されているのだ。
飲んでみると、独特の香味があって、後口にほんのり渋みが残る。
料理との汎用性も高く、赤か白か迷ったときにオレンジは便利。アジやサバなど青魚との相性もいいので、テイクアウトした鮨と合わせて自宅で飲むのもよさそうだ。
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