プレゼント。
その包み紙を開けたとき、送り主から相手への想いが明らかになる。
ずっと言えなかった気持ち。意外な想い。黒い感情…。
ラッピングで隠された、誰かの想い。
そこにあるのは、プレゼントなのか。それとも、パンドラの箱なのか──。
広いリビングで、沙穂と悠史は静かに食事をしていた。
ここは南青山にそびえ立つタワーマンションの最上階。窓からは東京の夜景が一望できる。
静寂の中、ナイフとフォークの音だけが異様に存在感を放つ。
厳かなのか、気まずいのか、日常なのか。よくわからない空気感の中、悠史が沈黙を破った。
「もうすぐ、クリスマスだな」
沙穂の顔が、微かに強張る。
クリスマス。12月25日は沙穂の誕生日。
この日だけは悠史が何でも願いを叶えてくれる。欲しい物を何でも買い与えてもらえる。
沙穂にとって、聖なる日であると同時に、特別な日なのだ。
「そうですね、もうすぐですね」
「今年は何が欲しい?」
沙穂は、一呼吸おいて言った。
「何でも…。何でもいいんですよね?」
「あぁ。そう言ってるじゃないか。毎年なんでも買ってやってるだろう」
「今年はものじゃなくて…」
「なんだ…」
沙穂は意を決して、口を開く。
「ひとつお願いしたいことがあるんです」
悠史は、沙穂の思惑にまだ気づいていないようだ。
この記事へのコメント