
~分野を問わず、そのときの自分にできることを。あらゆる経験を生かしてフードロス問題に挑戦したい~
頼まれた仕事をこなすうち、ハリウッドのプロデューサーに
金丸:大物実業家にとっても「言ったことを、本当にやるなんて」と、新鮮だったんでしょうね(笑)。
山田:その後、リチャードから「慈善団体を立ち上げるから、共同チェアをやってくれ」と。正直、荷が重いなと思いましたが、4〜5年務めました。
金丸:軽い気持ちの語学留学が、気づけば大抜擢されて。
山田:日本人という属性があってこそなのかな、と思います。アメリカでは当時から、ダイバーシティが意識されていました。私は「アジア人」で「女性」で「若い」。私ひとりを入れておけば、いろいろとカバーできてしまうので。
金丸:そういう側面はあるかもしれませんが、実力が伴っていなければ、新しい仕事を任されることはありません。分野や規模が違っていても、果敢に挑戦して結果を出すからこそ、次につながっているのでしょう。
山田:ハリウッドの著名人はチャリティに熱心な方が多いのですが、リチャードと仕事をしているうちに、ハリウッド俳優を紹介してもらうこともありました。
金丸:とうとうハリウッドにつながりましたね(笑)。
山田:俳優と一緒に活動したのは、2010年のハイチ地震復興が最初でしたね。私のこれまでの活動を知ったショーン・ペンのチームに声をかけられ、現地に乗り込むショーンに同行しました。それが終わったあと、チームの人から「あなたはプロデューサー向きだ。プロデューサーをやったらどうか」って。
金丸:「ハリウッドでプロデューサーをやったら」なんて言われる日本人、山田さん以外にいないんじゃないですか?
山田:ロサンゼルスって、関係者以外は住んでいないんじゃないかと思うくらい、ハリウッドの仕事をしている人が多いんです。そんな街だから「ハリウッドと関係ない仕事をしているほうが格好いい」と私は思っていて(笑)。だからやるつもりはなかったんですけどね。
金丸:でも結局、アル・パチーノの映画でプロデューサーを。
山田:アルが困っていたとき、たまたま私の知人のおかげでトラブルを乗り越えることができたんです。そしたら「プロデューサーで入ってくれないか」と。
金丸:頼まれて結果を出して、たくさんの人とつながって。それがまた新しい仕事を連れてくる。
山田:だから私のこれまでは「こういうことがしたい」と自分で選んできたというよりも、ちっちゃいことの積み重ねなんですよ。「そのときの自分にできることをやってきた」という感覚なので、大きいアクションを起こしたことは一度もない、と自分では思っています。
金丸:飛び抜けてすごいことをしていないとしても、いろいろな領域で活動されてきたことは、山田さんの武器ですよね。
山田:最近では学生たちを相手に講演させていただく機会も多いのですが、スティーブ・ジョブスの「創造性とは物を繋ぐ力。自分の業界を超えて違う経験をすべき」という言葉を紹介しています。たとえばプログラミングだけを一生懸命やっていても、その世界で1位になれるかというと、やっぱり難しいじゃないですか。でも、エンターテインメントの世界を知っているプログラマーや、法律知識のあるプログラマーだと、ほかの人には生み出せないアイデアが湧くかもしれない。
金丸:そう。スキルや知識、経験の組み合わせがユニークさを生む。
山田:海外に飛び出せば、日本人という属性だって武器になります。アメリカに来た日本人を何人も見てきましたが、数年経つと「いかにもアメリカ人」みたいに振る舞うようになる人が多くて。
金丸:アメリカ人になろうとしたって、アメリカで生まれ育った人にはかなわないでしょう。
山田:「大言壮語しない」とか「時間を守る」とか、日本人だからこその強みがあるし、声をかけてくる人だって、そんな部分に期待しているところもあります。チームとしても、メンバーがアイデンティティを捨ててしまったら、ダイバーシティは成り立ちません。