阿佐ヶ谷

スターロードや一番街、パールセンターなど“味な商店街”に心が安らぐ阿佐ヶ谷。
かつて多くの文人が住んだというこの街の酒場は、自由でどこまでも個性的だ

“百花繚乱”が阿佐ヶ谷酒場のキーワード

中央線沿線には“東京で住みたい街”の1位を獲得した吉祥寺や、最近、グルメタウンとして脚光を浴びている西荻窪、サブカルチャーの聖地として知られる中野など、キャラの立った街が多いが、そのなかでいうなら、阿佐ヶ谷は老成しているというか、渋いというか、もっと言えば地味(失礼!)なイメージを抱かれがちだ。

だが、それはあくまで外から見たイメージ。阿佐ヶ谷駅近くのスターロードや一番街は、多種多様な味アリ酒場が軒を連ねる、いわば酒好きのワンダーランド。旨い酒と肴を求める客で、夜毎にぎわいを見せる。

2010年にスターロードのはずれにオープンした『水鳥屋 鶴に橘』は、都内の人気和食店で腕を磨いた上田強詞さんが、ひとりで切り盛りする店。もともと日本酒が好きで富山の『勝駒』と『千代鶴』に出合ったのをきっかけに利き酒師の資格を取得したという。

旬をとらえた料理と、厳選した日本酒でお客をもてなすのは開店16年目の『みや野』。1日3組までの完全予約制だが、阿佐ヶ谷らしく気取りは皆無。店主が生産者と触れ合い仕入れた食材を丁寧に調理し、食べ手にその味を届ける。

店主の個性が色濃く反映された酒場こそが、この街の象徴だ。

海老と茄子の田楽¥630。柚子味噌の香りが引き立つ『開運』のひやづめ吟醸とともに

水鳥屋 鶴に橘

ミズトリヤ ツルニタチバナ

毎日30~40種の料理を用意。土台は正統、その中にエッセンスとして"遊び"を加えるのが上田流だ。日本酒は「味がしっかりのっているが毎日飲んでも飽きない酒」を基準にセレクト。常時30種前後を揃える。

秋味の南瓜蒸し。料理はすべて¥7,350のコースより。南瓜は北海道の佐藤さんが作ったプッチーニという品種を使用

みや野

ミヤノ

「営業時間も曜日も特定しない」のは、予約が入った時点でお客に要望を聞き、そのときどきでベストな食材を仕入れたいという気持ちのあらわれ。料理は10皿7350円のコースのみ。来店の前日までに要予約。

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