
仔羊のわら包みの芳しさ、柔らかさ。他では味わえない逸品
テーブルに運ばれてきた紙包みを開けば、どこか干し草を思わせる独特の薫香と共に、米藁に包まれた仔羊が姿を見せる。その柔らかな藁の香りを身に纏い、しっとりと焼きあげられた骨付きの仔羊に刃を入れれば、美しいロゼ色の断面が現れる。これが、『フィオッキ』の名物料理「仔羊の藁包みロースト」。堀川亮シェフのスペシャリテである。
「本来は、畑仕事に出る時に藁で包んだ仔羊を焚き火に置いて作った料理」だそうで、堀川亮シェフが修業時代を過ごしたピエモンテ州のトッレ・ペッリチェ渓谷に伝わるヴァルド派の料理だ。この伝統料理をリストランテの一品に昇華させたのが、修業先『フリッポー』のシェフ、ワルテル・エイナルド氏だとか。
滋味深く仔羊特有の風味が広がる一皿は素朴ながらも、長い歴史に育まれた料理ならではの風格が漂う。