この結婚、間違ってた? Vol.2

深夜2時のベッドルームで、夫の秘密を暴く28歳妻。彼女を不幸に陥れた“指紋認証”の罠

バニラな女


「悔しい…。俊介は絶対、浮気してるのに」

「え~!?だって、麻友子さん妊娠中ですよね。だったら、かなりのクズじゃないですか」

職場の休憩室で、サンドイッチを食べながら、美容カウンセラーの來未が答えた。

他業種から転職してきた2歳年下の彼女は、仕事ができるしサッパリとした性格で、私は気に入っている。以前、家に招いたこともあるのだが、人見知りの夫と初対面から意気投合していた記憶がある。

私は今、妊娠5ヶ月。ようやくツワリの吐き気からは解放されたが、常に体調が良いというわけではない。


私も來未もクリニックで働いているため、在宅勤務になることもなく、忙しさはコロナ前と変わらない。逆に外資系コンサルの夫は、ほとんどがリモート勤務で、色んなところで自由に仕事をしている。

「だよねぇ。でも、最近よくホテルで仕事してるみたいでさ。ほら、今そういうプラン増えたでしょ」

「俊介さんの仕事、英語で会議とかよくするし便利なのかもですね」

「まぁ、そうかもしれないけど…」

妊娠中は情緒が不安定になりやすい。だから、私の考えすぎなのかもしれない。

それにしても、來未は俊介の名前や仕事内容までよく覚えている。さすが、営業成績No.1のカウンセラーだ。などと、感心してしまった。

「証拠さえ、あればなぁ」

私は独り言を呟くと、デカフェのコーヒーを一口飲む。

夫の俊介は、かなりモテる。

身長は178cmと低すぎず高すぎず、水泳部だったからか胸板が厚い。万人ウケする爽やかな塩顔で、毛穴の見あたらない肌は、女性より綺麗なほど。

私は、10代の頃アイドルの追っかけをしていた。某掲示板で有名になるほどイケメン好きで、自他共に認める面食いだ。

結婚を決めた最大の理由は、"夫の見た目”だ。

だから、恋人同士の時は多少の火遊びは目をつぶってきた。

彼は、そんな私のことを、“理解のある女性”だと褒めてくれていた。アイスで言うと、バニラ。結局最後は戻ってきてしまう味だと。

私は、そんなに大人だったわけじゃない。

ドンピシャにタイプな顔の男と、別れたくなかっただけだ。どんなに酷いことをされても、好みの顔の男に謝られると、許してしまっていた。

でも、結婚し妊娠してからは、それが無理になった。

結婚という契りを交わしたのに、身勝手に違反するなんて誠実さのカケラもなくて、気持ち悪い。

「あ!麻友子さん、裏ワザありますよ」

來未は、目をキラキラさせながら私にその方法を教えた。表向きは心配しながらも、他人のハプニングは楽しいのだろうか。

「ただ、そういうことされると、一気に冷める男性がほとんどだと思うので…気を付けてくださいね」

その忠告を、私はこの時重く受け止めていなかった。

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