ニュースな女 Vol.4

「キスまでしたのに…」それ以上進展しないことに悩む28歳女。彼女がとった大胆な行動とは

マサヒコさん訪問の5日前


「で、そのマサヒコさんってどんな男なの?」

都内の中高一貫女子校で青春を共に過ごしたサヤに電話をかけて、メニューについて相談することにした。サヤは昨年、名家に嫁いだ。面倒見がいいので、何かと頼ってしまう。

「一橋卒、損保会社勤務、車はBMW」

「それはまた絵に描いたような理想の彼氏だね。まあ、でも彼に手料理って戦法は間違ってないと思う」

サヤは彼をそう分析する。

「なんで?」

「都内屈指の国立大に入って、就職したい企業ランキングの常連みたいな会社に就職。そのうえ憧れの車ブランド第1位のBMWに乗ってるなんて、THE王道の男じゃない。手料理、絶対に好きでしょ」

サヤは嬉しそうに続けた。

「彼、きっと役員秘書っていうアズサの肩書も気に入ってるわね。うん、この勝負、もらったわよ!」

― 勝ち負けではないんだけど…。


メニューの詳細について2人で話し合ってるうちに、サヤが思い出したように言った。

「そうだ、案外いい仕事をするのは果物だよ。献立全体をワンランク上げてくれるの」

「果物かー。マサヒコさん一人暮らしだし、食べる機会なさそう。新鮮でいいかも!」

「あ、給食じゃないんだから、ミカンを丸ごと1個渡すとかはダメよ。きれいに切って、ガラスの器にのせて出してね」

危ない。果物と聞いて、私の頭にまず浮かんだのはミカンだった。動揺を隠して、聞いてみる。

「どんな果物がいいかな…?」

「旬だし、ビワは?ちょっと料亭っぽいでしょ」

― ビワなんて数年食べてないし、そもそもいつも手で剥いてたけど…。

私の困惑が伝わったのか、サヤは助け船を出してくれた。

「検索すれば、剥き方の動画、たくさん出てくるよ」

「よく知ってるね」

感心していると、サヤはため息をついて教えてくれた。

何でも結婚後、旦那さんの実家に初めて泊まった時、「サヤさん、食後に桃を剥いてくださる?」と義母に頼まれて冷や汗をかいたんだそう。

「切って盛り付けた桃一皿に、私の育ち、美意識、教養のすべてが問われている気がしたよ…」

― 結婚生活おそろしや…。

切る前にこっそりスマホで剥き方の動画をチェックして、事なきを得たらしい。

とにかく相談したこともあって、メニューは決まった。

お礼を言って電話を切り、買うべき食材のリストをスマホのメモに打ち込んでいく。

メインはステーキ。

身も蓋もない話だけど、いい和牛を買う。味付けは塩、ポン酢、ワサビでご自由に(つまり、味に関して私に責任が及ばない)。塩は、春らしくピンクソルトにしよう。

トースターで作る焼きトマトを添える。

栄えある季節の一品枠に選ばれたのは、ハマグリの酒蒸し。簡単なわりに、料理できる感がそこはかとなく漂う一皿。

ポテトサラダも作ることにした。

何を隠そう、私の得意料理だ。おしゃれな居酒屋でよく見る、野菜がゴロゴロ入っているタイプだ。

そしてビワ(剥き方は要確認)。

当日の金曜は、実は午後休をとっているが、「さっきまで仕事してたから、簡単なものばかりでごめんね」というテイで迎えるため、このくらいのボリュームにしておいた方が自然だろう。

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