マテリアル夫婦 Vol.1

マテリアル夫婦:女優と結婚した35歳起業家。日本一の”勝ち組男”が新婚早々恐怖を感じたワケ

「その絵はソファの上辺りにお願い。あ、気をつけて、それエド・ルシェの絵で200万ドル以上もしたんだから。ブルース・ナウマンの絵は廊下で、バルーン・ドッグは玄関に置いて」

60畳のリビングに続々と運び込まれる美術品。

サザビーズやクリスティーズで落札したときの高揚感が、“一瞬だけ”蘇る。

美術品には、これまで全く興味がなかったが、3年ほど前に偉大なる起業家の先輩の自宅に飾ってあったジャン=ミシェル・バスキアの作品をみて、雷に打たれたような衝撃を受けたのをきっかけにコレクターになった。

とにかく単純に、理屈なしに「カッコイイ」と思った。

時計も飽きた、車も飽きた、全てに飽きた男がたどり着く最後の沼は、アートなのかもしれない。

未だにアートについてはよく分からないが、美術品は、価格が上がる場合もあるから投資する価値もある。

高額なアートを購入すれば、自分の知名度が上がり国内外の富裕層との人脈も広がる。

世界的に有名な芸術家の作品は “勝ち組”の証。

リモート会議や自宅での取材が増えたから、さりげなく写り込ませたいという下心もある。

なにより、 “ホンモノ”の仲間入りができたような気がして、自尊心をくすぐられる。


「はぁ、最高の眺めね。私、マーくんと結婚できてとっても幸せ」

テレビの中で生きていた沢山リカ(27)が、僕だけの“モノ”となり、無防備な笑顔を僕だけに見せている。

仕事で成功して、良い時計をして、良い車に乗って、良い家に住んで、良い女と結婚するのが夢だった。

ミスコン、アイドル、グラビア、モデル、女子アナ、キャリアウーマン、令嬢、いろんな女を見てきたが、やはり良い女の頂点に君臨するのは女優だろう。

妻にするなら誰もが羨むような女が良かった。日本一の美女であるリカに狙いを定め、あの手この手を尽くした。

リカが好きなブランドを調べ、コレクションに招待してもらい、フロントロウで隣の席になるように偶然の出会いを仕組んだ。

「海が見たい」と言われれば、すかさず先輩からプライベートジェットを借りエメラルドグリーンの海がある場所まで彼女を連れ去った。「ピザが食べたい」と言われれば、弾丸でイタリアまで飛んで世界一美味しいピザをご馳走した。

とにかく、リカの笑顔のために全力を尽くした。そんな無茶ができる男は、さすがに僕しかいなかったようで、目を輝かせた彼女に手応えを感じた。

—なんとしても、この女を手に入れたい。

リカはハリー・ウィンストンで落とせるような女ではないと思った僕は、世界で最も美しいダイヤモンドを求めて、南アフリカ・ボツワナ共和国にあるジュワネング鉱山まで足を運んだ。

意図的に熱愛を発覚させてからは、仕事をセーブして僕といる時間を優先するようになっていった。

2019年の年末にはナミビアまで飛んで、ナミブ砂漠で初日の出を見た。

そして、ポケットに隠していた大きなダイアモンドを差し出して、こう言った。

「一緒に宇宙に行こう」

この記事へのコメント

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前澤さん?高城さん?
2021/03/04 05:4999+返信11件
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お金が有り余り過ぎて、それでも心が満たされないとか言う人って、とりあえず恵まれない人などに寄付とかから始めてみたらどうだろう…って勝手に思った。
2021/03/04 05:3390返信7件
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凌と麗奈の話に出てきた三枝マサルが、今回の主人公なんだね😃 幸せそうな二人も出て来て欲しいな😃
2021/03/04 05:3151返信10件
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