妻のベール Vol.8

「夫の目の前で、他の男に夢中になるなんて」妻が垣間見せた本性とは

結婚相手に経済的安定を求める女性は、多いと聞く。

結婚相手の職業人気ランキングを見ても、その通りと言えるだろう。

しかし中には、夢追う夫を信じ、支える“献身的な妻”というものもいる。

IT社長として成功した柳川 貴也(やながわ たかや)の妻・美香もそうだ。

一緒に貧しい時代を乗り越え、今でも夫の一番の理解者。彼女の支えがあったから成功出来たと言っても、過言ではない。

しかし、夫の思いとは裏腹に、財を手にした妻は豹変していく。欲望のままに。

◆これまでのあらすじ

急に離婚を突きつけてきた妻・美香。しかし、簡単には財産がもらえないと分かると、「じゃあ、忘れて」と離婚届を引っ込めた。美香のペースにのまれかけていた貴也だが、ついに反撃に出る。


−離婚弁護士に世話になるなんてな。

貴也は、離婚に強いと評判の弁護士を訪ねていた。懇意にしている企業法務専門の弁護士が紹介してくれたのだ。

出会ってみての第一印象は、“パッとしない男”だった。スーツの色も地味だし、そもそも体型にあっていないように見える。

「本日はよろしくお願いいたします」

恭しく頭を下げてきた彼の頭頂部に、10円玉大のハゲを発見してしまった貴也は、そこから目を背けるようにして自分も頭を下げた。

−俺も胃に穴空きそうだし、それを仲裁するのが仕事なんだから、そりゃハゲくらいできるよな…。

貴也はそう頭の中でぼやき、第一印象とは裏腹に“この人は信頼できるかもしれない”と、非常に親近感を持った。それだけ依頼人と一緒に悩んでいる証だと考えたのである。

「奥様のご相談ということで…」

控えめに切り出した弁護士に、貴也は近況を打ち明けた。

妻の行動に不審感を覚えて探偵に頼んだこと、毎晩豪華な生活を送っていて、貴也の知らぬ間に大金を使っていたこと。さらに、妻と大げんかになり、価値観のすれ違いから離婚を考え始めたこと…。

妻が一度は離婚届を突きつけてきたものの、そう簡単に財産がもらえないのがわかった途端に引っ込めたことは…今は明かさないでおいた。この問題について、自分にも非があるのではないかと思われたくなかったのだ。

「まあ女性は多かれ少なかれ、流行り物とか、煌びやかなものに弱いですからね」

目の前の40代後半にもなろうかという弁護士は、苦笑しながら言った。

−そういえば…。

その言葉が引き金となり、貴也は唐突に思い出したのである。美香に“ミーハー女の素養”があったことを。

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