2020.03.07
恋愛依存症 Vol.2その食事会は、数日後すぐに開催されることになった。
「絵麻さん、本当に彼氏いないんですか?こんなに可愛いのに」
焼き鳥をもぐもぐさせながら、隣に座っている男が聞いてくる。
二子玉川にある『酉たか』での食事会は、主催者本人のはずの橋田が仕事で急遽来れなくなり、初対面の男性ふたりと私の3人で食事することになってしまった。
「すっごくモテそうなのに、どうして彼氏いないんですか?」
特に隣にいるこの男は、さっきからずっとニヤニヤと楽しそうにしており、同じような質問を何度も繰り返している。
本当は、ついこの間まで彼氏はいた。だけどまさか交際たった2週間で逃げられたなんて、言えるわけがない。
きっとこの男も、私がまさか恋愛依存症の重い女だろうとは1ミリも思っていないんだろう。
インスタを見てどうしても紹介してほしいと言っていたらしいが、そんな彼ももしも私の本性を知ったら、尻尾を巻いて逃げていくのだろうか。
そう思った私は、素直な気持ちを口にした。
「なんででしょうね。めんどくさい女だからかもしれないです。私、彼氏ができると本気で夢中になっちゃうんですよ」
そう言うと、その男は目を丸くして驚いている。
「えー!嘘でしょ?全然そんな風に見えないよ!どう見ても男を振り回すタイプだよ、絵麻ちゃんは」
確かに、どうでもいい人のことは振り回しているのかもしれない。この男も、私の機嫌を取ろうと必死な様子が伺える。
ー好きでもない人にばかりモテても、仕方ないんだけど…。
不意に、私の向かい側に座るもう一人の男性に目を遣った。
彼の名前は、栗原潤平。確か自己紹介で外資系コンサルだと言っていたが、それ以上の情報は覚えていない。ただ、どこか人を見下すような発言と、冷たい眼差しが苦手だった。
「ちょっと、お化粧室行ってきます」
この空間にいるのがなんだか疲れてしまい、席を立つ。
軽くメイクを直して化粧室を出ると、廊下のところで栗原潤平とバッタリ会った。すれ違いざまに、潤平が耳元で囁く。
「絵麻さんさっきから、あいつのこと興味ないって、顔に書いてありますよ。俺の隣、来れば?」
そう言われ、妙な気持ちになる。苦手なはずのにドキッとしてしまうこの感じ。それは恋の始まりととてもよく似ていた。
そして一緒に席に戻ると、私の隣にいた男に呆れた顔で声をかけた。
「お前、飲みすぎだわ。そこどいて。次は俺が絵麻さんと話す番ね」
潤平は、その男を強引に移動させた。するとそれが面白くなかったのか、男がレモンサワーを飲み干してからキレ気味で潤平に尋ねる。
「潤平はさ、めんどくさい女ってどう思う?」
「抽象的だな。例えばどんな?」
「返信がなくてもしつこく連絡しちゃうとか、頼まれてないのに勝手に料理して部屋で待ってるとか、手作りのプレゼントとか...そういうのだよ」
思わずギクリとした。なぜなら、普段の私の行動そのものだからだ。
しかし潤平は、サラリとこう言い放ったのだった。
「俺のこと好きでしてくれてるんだったら、全然いいでしょ。むしろ何がダメなの?」
ーえ…?今何て言ったの…?
その意外な言葉に、思わず彼の顔をまじまじと見つめる。目を見ると引き込まれそうで、そこから離せなくなった。
潤平が放った一言は、これまで散々彼氏に逃げられてさすがに傷ついていた私には、救いのように聞こえた。
そして気づけば、私の耳には潤平の声しか届かなかった。さっきまで頭の中の大半を占めていたはずの倫也の存在は、いつの間にか消え去っていた。
▶Next:3月14日 土曜更新予定
「彼だったら、こんな私を受け止めてくれるかも…?」潤平と急速に距離が縮まるが、果たして…
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
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