
飯盗な惣菜が悩ましい“農家楽”ランチ
※こちらの店舗は、現在閉店しております。
困ったランチである。どれも食べたくなってしまい、選べない。メニューには、6種類の惣菜と、4種類の麺料理が並んでいるが、他の中国料理店にあるような料理は、ひとつとしてない。
“農家楽”といって、中国では都会人が休日を農家で過ごして楽しむ娯楽があり、その時に供されるような料理が並んでいる。つまり、香辛料や自家製発酵調味料を使った、素朴な田舎料理で、『老四川瓢香』井桁良樹料理長の、四川家庭料理への思いが滲んでいる。だからこそ、食いしん坊心をくすぐるのである。
悩みに悩み、「魚香肺片」を選んだ。的確に火が通されて生きた、豚レバーの甘み、苦瓜の苦み、トウモロコシの食感が、甘酸っぱく辛い魚香ソースの中で、絡み合う。レバーを食べ、苦瓜を食べ、急いでごはんを掻き込む。ああ、この幸せを、どうしよう。
唐辛子のピクルス、泡辣椒の錬れた深い酸味が効いていて、それがまたごはんを恋しくさせる。
後日頼んだ、「郷土砕羊肉豆花」も、油を多用しながら脂っぽさを微塵も感じさせず、激辛味の中で広がる豆腐の甘みと羊肉の滋味に、ごはんが進む。
困った。麺も考えれば、十日間通わなくてはならない。