
このアルバムを決して開くな。そこにある過去を知った者はやがて…必ず消えていく。
◆中学校
人に溢れた場所は、その時代の楽しさと引き換えに、やがて罪なき寂しさを引き受ける。
…ザザッ、ザザザザッ
グラウンドから芽を出す雑草が、潮風に揺れる。
ー 館山市立第四中学校。
かつて橋上恵一が、保護施設を出て、叔父の根本和明に扶養されていた時代に通っていた中学校。
その枯れた風景に吸い寄せられるように、痩身の男が、車から降り、グラウンドに近づく。
子供の気配を感じ取ろうとするように、男はすこし俯きながら目を閉じる。
…サッカーに興じる男子の叫び声。
…いつまでも帰らずに会話を楽しむ女子の笑い声。
ーなあ。
ーどんな気分だった?恵一。汚れていない子供たちの中に、ひとり異物が混ざっている気分は。
ーどうなる?そこで時間を過ごすと。
男は何かに気づいたように、素早く目を開く。
ー”より一層狂う…”
…ゴゴゴゴゴッ
もう一台の車がこちらを探るように近づき、停まる。
男が車に目をやると、ゆっくりと車のドアが開く。
「工藤さんですか?」.....
この記事へのコメント
工藤、かっこよすぎる!!!
最近東カレご無沙汰しておりましたが、これを読むために戻って参りました。
続きありがとうございます!!!