「郊外に住むサラリーマンなんて、興味なかった」都内在住のOL27歳が、茨城に嫁いだ理由

だが結納から結婚式、そして引っ越しまで一連のイベントを済ませ茨城に住み始めると、やはり東京が恋しくなったと言う。

「悔しかったから、失恋後も会社は辞めずに、守谷から通勤していたんです。でも先ほど話したように、初めての長距離通勤、初めての土地になかなか慣れなくて…」

独身時代のように、会社帰りにふらっとお洒落なお店でディナーをすることも、買い物できるわけでもない。

「とは言っても、守谷はど田舎という訳でもないし、便利ではあるんです。ショッピングモールやホームセンターがあって生活に不便はない。ただいくらそう言い聞かせても、どんどん自分が色褪せていくようで…焦りました」

慣れない生活にストレスが溜まり、通勤時には蕁麻疹が出るときもあったと言う。しかしそんなとき、ご主人との間に新しい命を授かった。

「妊娠を機に、それまで勤めていた会社を辞めたんです。悪阻がかなりひどくて通勤するだけで一苦労だったし、妊娠初期に不正出血もあって」

会社を辞めると、都内に出る機会はほとんどなくなったが、妊娠して初めてこの土地の良さに気づいたと言う。

「主人は小学校から大学までずっと茨城なので、地元愛がかなり強いんです。友人も、行きつけの病院も、美容室も全部守谷で完結している。それが最初は正直、『世界が狭いな』と思ってしまうこともあったのですが、助けられた部分も多くて」

まず、妊娠中から体調を崩しがちで、生まれてきた息子さんも病気がちだという彼女にとって、個人クリニックから総合病院まで、医療ケアが充実していたのが有難かった。

「主人が赤ちゃんの頃から通っている内科が近くにあって、そこに息子も通わせています。息子は病気がちなので、本当助かっています。あと公園も多くて、中心地に10個くらいはあるので、子供を育てるのにとても良い環境ですね」

子どもを産んで、茨城の良さを受け入れられるようになった


また地元愛の強い人が多いため、そのネットワークに助けられることも多い。

「休日は主人の幼馴染とバーベキューしたり、家に遊びに行ったり…。親戚も大体この辺りに住んでいるので、核家族、という感じがしないですね。何かあったあときはお互い様、という雰囲気です。この間ついに主人が3歳の頃から通っている美容室に息子を連れて行ったら、全く同じ髪型になっていて、思わず笑っちゃいました」

こうして、ようやく茨城の良さを受け入れられた彼女は、あることに気づいたと言う。

「私は東京出身なので、それが当たり前だと思っていたのですが…。東京って自分が“何者”かになっていると思わせてくれる街なんです。だって多少自由になるお金があれば、お洒落なレストランに行けるし、トレンドの服もすぐ買えるし、人脈を少し辿れば有名人にだってすぐ会えますから」

東京という街のおかげで自分が成り立っていた、と話す亜矢子さん。実は最近、息子さんが小学校に入り、仕事を再開したと言う。

「大学の先輩が結婚して同じ沿線に住んでいて、教育関係の会社を立ち上げたんです。私はそこで、PRとマーケティングの仕事をしています」

その女性経営者は、亜矢子さんと同じく出産を経て会社を辞めたという。そして東京でのキャリアを活かし、いま住んでいる土地に貢献しようと起業したのだとか。

「これからは東京の刺激に頼るのではなく、家族を大切にしながら自分の人生をしっかりと生きたいと思います」

どうやら茨城での生活で、自分の“軸”を見つけたようだ。

「まぁそんなきれいごとだけじゃなくて、子育てがもう少し落ち着いたら、都内でショッピングや食事をもっと楽しみたいですが(笑)」

そう締めくくった彼女は、今日一番の笑顔を見せた。


▶NEXT:10月20日 日曜更新予定
東京人が、思わずコンプレックスを感じてしまう土地とは・・・

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