オトナな男 Vol.4

付き合っていない男の部屋に誘われて、思わず・・・。「好き」とは言わない男の誘惑に負けた女

女には少なからず人生に一度、“大人の男”に恋する瞬間がある。

特に新入社員時代、先輩や上司に憧れを抱き、社内恋愛にハマる女性は多い。

だが場合によっては、その先にはとんでもない闇が待っている場合も…なくはないのだ。

◆これまでのあらすじ

遠距離恋愛中の彼氏・悠からの素っ気ない連絡の日々は続く。

そんなある日、咲希は朝の電車で憧れの圭太に遭遇する。圭太を思わず目で追ってしまうが、そんな咲希の気持ちは圭太にお見通し。

その日の仕事終わり、圭太に食事に誘われる。スムーズなエスコートにますます圭太の虜に。しかしこれが地獄の始まりとは、知る由もなかった…。


圭太との食事の帰り道、咲希は一人浮かれていた。

「咲希ちゃん可愛い、まじで」
「一生懸命頑張ってる咲希ちゃんがすごい好きだよ、俺は」

先ほどの圭太の発言を何度も何度も頭の中で繰り返す。しかし人間の記憶力はそれほど優秀ではなく、少しずつ記憶が薄れていくのを、焦れったく感じていた。

―早く、もう一度会いたいな。

そんな思いが頭の中を埋め尽くしていることに自分でも驚いていると、スマホが震えた。悠からだった。

そういえば、先ほども着信があったのを忘れていた。あんなに待ち焦がれていたはずの悠からの着信を、素直に喜べないでいた。

10秒ほど画面を見つめたのち、電話に出る。

「おい、お前どういうつもりなん」

開口一番、悠が強い口調で言った。昼間に悠に送ったLINEのことを言っているのだろう。

―もう好きじゃないなら、私も悠と付き合ってるのが辛い

そういう類のメッセージを立て続けに送っていたのだ。

「咲希、ほんまに俺と別れたいん?」

何もわかっていないような悠の発言に苛立つ。それでも、久しぶりに聞く悠の声にホッとしていた。

「別れたいわけじゃないけど・・でも冷たいの嫌だもん」

「何それ、女々しいなあ。てかその変な東京弁やめて、東京がうつったなあ」

社内では、関西弁を話すことが気恥ずかしく普段は標準語を使うようにしていた。特に電話対応は関西弁を一切使わない。思わず会社の癖が出てしまったことを、悠はこれでもかと指摘する。

その声は、LINEのどんなに素っ気ないメッセージよりも冷たく聞こえた。何となく感じていた悠との距離が一気に開いたようだった。

「そっかな。自分ではそんなつもりないけど」

悠の態度についてこれ以上言及する気にもなれず、それとなく返す。

「ま、考えすぎやって。夏休み帰ってくるんやろ?その時はその変な東京弁やめてや。じゃあ眠いし切るわ」

電話は一方的に切られてしまった。こんなはずではなかった、という思いで胸がいっぱいになる。先ほどまでの圭太との楽しかった時間が、今の電話で全て、消え去ってしまうようだった。

それ以来どちらから連絡することもなく、1週間が過ぎていった。

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