オトナな男 Vol.3

「私、彼氏がいるのに…」女を虜にする男が、デートの帰り際に発した一言とは

その日は、一日中何となく暗い気持ちで過ごした。なんとか業務を終え、重い足取りで渋谷駅へ向かう。悠に送ったメッセージは、既読になっていた。

「あれ、咲希ちゃんだ。お疲れ様、今帰り?」

聞き覚えのある声に体が熱くなるのを感じる。

「吉沢さん、お疲れ様です、いま帰りです」

平静を装って答えるが、自分の発した声があまりにも明るくて笑えてくる。文字起こしされたら、語尾に音符マークがついているだろう。

「今から帰るんだよね、時間ある?ちょっと飲みに行かない?」

唐突な圭太の提案に、一瞬思考回路がショートする。

「あ、はい。お付き合いさせてください」

頭はパニックに陥ったままだったが、こういういざという時はどこかで学んだ定型文が出てくるようだ。

「そんな堅苦しいこと言わないでよ、よく行くお店があるんだよ」

そう言って圭太は歩き出す。はい、と頰を赤らめながら付いてくる咲希を見て、圭太は口角を上げたようだった。



以前海斗と訪れた道を圭太と歩く。圭太は咲希のペースに合わせて歩きながら、質問を投げかけてくる。

「最近調子どう?」「楽しくやってる?」「嫌なことない?」

以前ここを海斗と歩いた時に感じた居心地の悪さは、渋谷の街のせいではなかったようだ。


圭太が咲希を連れて入ったお店は、落ち着いた雰囲気の創作串カツのお店だった。ほどよく混雑した店内では、咲希の話を中心に会話が繰り広げられていく。

咲希の緊張はいつの間にか消え、圭太との会話を純粋に楽しんでいた。ポケットで震える悠からの着信には、もはや気付きさえしなかった。

......


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