2019.10.04
東京発⇒地方行き Vol.1「夏頃から気が付いていたんです、自転車やベビーカーに乗ってる人が少ないなって。それもそのはず、使えない期間が長すぎるのと、建物や目的地の距離が遠すぎる。」
北海道では、10月から5月のゴールデンウィークくらいまで雪が降ると言う。だから半年くらい、地面が常に凍結してツルツルだとか。
「私、免許がないんです。おかげで近所のイオンの買い出しに子供用のソリを引いていきました。町中スケートリンクみたなものなので、食材を抱えて歩くなんて無理なんです。
東京にいた頃はヒールの靴が大好きでたくさん持っているのですが、千歳市に来てからはほとんど履いていません。歩いてる人の足元を見ても、ソールの溝しかみてないかも。」
にっこり笑う彼女の笑顔には、北の大地で越冬した力強ささえ漂う。
何かと不便を感じて冬に免許を取りに行こうとしたが、見学に行くと敷地内コースさえ雪に埋もれて雪道講習さながらだったため、怖気ついて春を待ったという。
「札幌は例外中の例外として、北海道はまだまだ自然と人間が共存している感じ。市役所からヒグマ出没情報も配信されます。そんな中で移動手段は徒歩のみって、友達もできやしません。一人ぼっちで本当に辛かったですね。」
人間関係も、“東京流”に固執していては駄目だった
見るからに社交的で華やかな彼女だが、こちらに来てからずっと友人ができなかったというから驚いた。それほどまでに北海道が閉鎖的なのだろうか?あるいは彼女のふるまいに何か問題があったのだろうか。
「これまで人間関係で苦労したことがなかったので、そういう心配はしてなかったんですが、それは東京の限られた人たちの中の社交術だったことに気が付きました。」
そして彼女はこのままでは駄目だと気づき、行動に移す。
「子供もいないし、仕事もしてないし、まずはきっかけが必要だと思ってコミュニティセンターや町内の集まりに行ってみたんです。」
だがそこには、思わぬ落とし穴があった。
「ようやくできたお友達に呼ばれて行ってみるとネットワークビジネスの宣伝お料理会だったり、自宅エステの勧誘だったり。考えてみれば東京のように女性の仕事が多くないから、どうしてもそうなる。やっと友達ができたと思っていた私は傷つきました、なんだかカモにされてるみたいで。」
そこで仕事をしてみようとハローワークに行き、検索するとヒットしたのは工場の早朝作業と漁師。強がっていた心はぽっきり折れた。
「とにかく寒いし、寂しくて、引きこもりがちになって。夫以外の人と1週間もしゃべってなくて、もう駄目だ、東京に帰ろうと思ったある日、以前ネットワークビジネス攻撃を仕掛けてきた年上の友達が、心配して山菜やタケノコの下処理してたくさん持ってきてくれたんです」
30歳にして初めて故郷を離れて、どこか力んでいた彼女は、そこでふっと力が抜けた。
勧誘が嫌ならどんどん断ればいい。北海道の人は合理的でさっぱりしていると言われるが、とにかく東京流に固執しては前に進めない。
そしてようやく雪解け。免許と小さな車を手にした彼女の世界は一気に広がった。
「小樽、富良野、ニセコに十勝。週末ごとに夫を乗せて1泊2日でドライブに行きます。私が好きなところに行きたいので、運転も私。2、300キロくらいならちょっとそこまでっていう感じ。」
また、北海道ならではの“社交術”も身につけたと言う。
「平日も、スポーツセンターやパン屋さんのアルバイトで知り合った人にこちらからどんどん聞いちゃいます。〇〇に行きたいんだけど一緒にどう?って。みんな忙しいから断られることもあるけど、北海道の人っておおらかだから変に探り合うってこともなくて。
東京では、どこか『お誘いや予定が多い人気者の私』に満足してたようなとこ、あったんですけど。どう見られるかより、どうしたいかだなって。私、ようやく楽に息ができるようになりました。」
そこまで話すと、彼女はふわふわの名物パンケーキをほおばった。そして美味しそうな海鮮丼が並ぶインスタを開きながら、にっこり笑った。
「ところで苫小牧の漁港に漁師さん御用達の食堂があるらしいんですけど、良かったら明日の朝ご一緒しません?」
彼女の北海道ライフはこれからが本番なのかもしれない。
▶NEXT:10月13日 日曜更新予定
外資OLが、茨城に嫁いだ理由とは
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
大手不動産会社ならまた東京に戻れる可能性もあるだろうし、その見込み時期にもよるのかも知れませんが、自分なら週末婚を続けそうです。
【東京発⇒地方行き】の記事一覧
2019.11.24
Vol.9
「これ、変わったお味やね」京都に嫁いだ東京女を悩ませる、姑の遠回しな嫌味
2019.11.17
Vol.7
「博多への移住で人生が変わった」夫の転勤で仕事を辞めた32歳妻の、華麗なる転身とは
2019.11.10
Vol.6
「夫のいない間に、若い男性と…」駐妻が明かす、コミュニティー内に蔓延る禁断の恋愛事情
2019.11.03
Vol.5
「一刻も早く子どもが欲しいの」。地方暮らしに馴染めず、夫婦生活が破綻した妻のとった行動とは
2019.10.27
Vol.4
“慶應一族”で育った妻が抑圧から解放された、大阪人の「知らんけど」精神の威力とは
2019.10.20
Vol.3
「実家はどこ?」「中学はどこ?」神戸で受けた2つの質問で感じた、東京女のコンプレックス
2019.10.13
Vol.2
「郊外の平凡サラリーマンなんて、眼中になかった」外資OL27歳が、お見合い結婚した理由
おすすめ記事
2020.10.15
東京戦略時代
東京戦略時代:オンライン会議のカメラの前で…。異例の出世を遂げた魔性の女の”武器”
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2017.09.19
港区男子の悲劇
MARCH中退、若手起業家の下剋上。「たった数千万の年収でドヤ顔」エリートサラリーマンを追い越せるか?
2021.02.25
マッチングアプリの答えあわせ【A】
マッチングアプリの答えあわせ【A】:「こういう質問してくる男はムリ…」女が嫌悪感を抱く、男の発言
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
- PR
2024.11.22
渋谷在住の29歳OLが自分へのご褒美に♡と、奮発したあるモノとは?
2017.02.02
私、港区女子になれない
高学歴って、女の人生に必要ですか?男の愛を利用して生きる、港区女子の主張
- PR
2024.11.22
2024年の締めくくりはこれで決まり! 美味でゴージャスな「アメリカンビーフ」を楽しめるステーキハウス4選
2019.11.11
偽装婚活
「今夜は、ちょっと・・・」食事会後、“2人きりで飲もう”という女の誘いを男が断った理由とは
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
この記事へのコメント